ドビュッシー「沈める寺」
以前、日本在住のオランダ人ピアニストの方に演奏を習っていた時期があります。テクニックや楽譜の読み方など、今の自分に欠かせないものを教えていただきました。
発表会もあり、社会人のピアノ愛好家やピアノ教師など大人の生徒さんと、演奏後ワインとともに談笑したことは良い思い出になっています。
その発表会で私が演奏したドビュッシー(1862~1918)の作品集「前奏曲」の第10曲「沈める寺」を掲載します。
ドビュッシーは、全音音階というそれまでの長音階や短音階と違う音階や、民族音楽にみられらる五音音階を使い、情緒や印象を描写しました。
この「沈める寺」は、ケルト伝説からインスピレーションを受け、「不信心により海底に沈められた巨大な聖堂が、少しずつ霧の中から鐘の音や聖歌とともに出現し、やがてまたゆっくりと沈んでいく」という、壮大で幻想的な曲になっています。
また、ドビュッシーの好んだ東洋的な和音や中世の聖歌のような重なった旋律(平行オルガヌム)、様々な教会旋法が用いられ作曲されています。
そして、ドビュッシーはこの曲集「前奏曲」で、演奏者が題名にとらわれすぎないよう、曲の冒頭ではなく、最後に「沈める寺……のようなもの」という形で示しましたが、この曲は鐘の音、光、海へ沈むさまなど題名の印象が目に浮かんでくるような作品になっています。