作曲家を知ろう③
「作曲家を知ろう③」は永遠の青年、シューベルトです。
歌曲「魔王」「美しき水車小屋の娘」交響曲「未完成」やピアノ曲「さすらい人幻想曲」「楽興の時」など数多くの名曲を残しました。
ピアノ曲は、聴き終わるとひとつの映像作品を観たような気持ちになり、この音楽は彼のどこからやってくるのだろう、と天才の偉業に感動します。
18世紀も終わりに近い1797年、フランツ・シューベルトはウィーンに生まれます。
父親からヴァイオリンを、兄からピアノを習うとみるみる上達し才能を現したフランツは11歳で今のウィーン少年合唱団の前身「コンヴィクト」という宮廷礼拝堂の全寮制少年合唱団へ入ります。そこで基礎教育と本格的な音楽の勉強を受け、優秀な成績を修めました。
父親は教師で、たくさんの子供や親戚を経済的に支えますが、その真面目で保守的な価値観はフランツとは相容れず、彼を苦しめました。18歳の時に、たった4時間ほどで作曲した「魔王」はそんな父親との関係を表したとも言われています。「お父さん、お父さん」という歌詞と切迫感のあるピアノ伴奏が印象的で、学校授業の鑑賞作品にもなっています。
才能にあふれたシューベルトでしたが、ずんぐりとしていて身なりや生活ぶりには無頓着。穏やかで控えめな性格で皆に愛され、多くの友人に恵まれました。
そして実家を出てからはほとんど間借り生活をし、作曲家として生きた31歳までの11年間にウィーン内で16回も引越をしています。
当時のウィーンは、「ウィーン体制」のため社会は思想抑圧されており、市民は日常をつつがなく過ごすことに努めていました。それでも革命、戦争、死が身近にある時代。
歳を重ねるほど、美しくもはかなさを孕んだシューベルトの音楽が心に迫ります。
「愛を歌うと悲しみになり、悲しみを歌おうとすると、それは愛になった」
(シューベルト散文より)