ピアノ


今回はピアノについてのお話を少し。
現在のピアノは、19世紀後半に完成しました。それ以前には、打弦の構造が違う2種類の「ピアノフォルテ」という楽器がありました。鍵盤を押し、梃子の原理でハンマーを跳ね上げて弦を鳴らす「ウィーン式アクション」、複雑な構造をもち、ハンマーを突き上げて弦を鳴らす「イギリス式アクション」です。

改良が盛んに行われたその頃は、ベートーヴェンの時代。
彼のところには楽器制作者が持ち込んだ新作のピアノがいつも置いてありました。
「ウィーン式アクション」はタッチは浅く俊敏で、華やかな音。
「イギリス式アクション」の鍵盤は深く沈み、音は大きく、和音を響かせました。
「イギリス式アクション」について、ベートーヴェン曰く「タッチが重すぎて作曲したくない程だ。」
なんと、指にかかる重さはウィーン式の2.5倍ほどでした。

それでも、改良によって音域が拡がり、音のよく鳴る「イギリス式アクション」はベートーヴェンにインスピレーションを与え「ワルトシュタイン」、「熱情」といったピアノソナタを誕生させました。
更に、ベートーヴェンは音域がもっと拡がることを見越して、まだ出来上がっていない音域のピアノ曲まで書いてしまいました。「ハンマークラヴィーア」というソナタです。

こういった改良の経緯を知っていくと、楽器製作者の熱意を感じずにいられません。
その後、アクションは「イギリス式」となり、今や音は電子音にもなっています。
浜松市や武蔵野音楽大学(リニューアルオープンのため現在は閉館中)にある「楽器博物館」へ行くと、当時の様々なピアノを見ることができます。
時折古楽器による催しもあるようですので、訪ねてみるのもお勧めです。楽器の特性を知り、楽しんで演奏していきたいものですね。

2020年06月17日