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音楽と感情



シューベルトのピアノソナタ13番。
私は最近、お気に入りの、その可愛らしい曲を弾いています。
1楽章の伸びやかなメロディー、幸せが訪れたような3楽章は弾いていて飽きることがありません。得も言われぬ感情を、直接受取っているように思うのです。


最近読んだ記事に、脳神経学者の大黒達也さんのこんなお話がありました。
大黒さんは認知科学から音楽について研究なさっています。

「私は音楽と言語はほぼ同じようなもの、と考えています。言語は境界線がはっきりしています。一方で、音楽は言葉では言い表せない、感情の空間を埋める役割を持っていると思っています。感情は、綺麗にカテゴライズされた「言語」より「音楽」の方が正確に表現できるのではないかと思うのです。」(ピティナより)

ピアノ教室の生徒さんには、耳を澄まし、聴こえてくるものに感動できるようになってほしい。音楽から創造力を養えるよう、いろんな演奏をたくさん聴きましょう。


では、ウィルヘルム・ケンプによる シューベルト作曲 ピアノソナタ13番です。


2024年02月08日

かわいい生徒さん



春から小学生になるNちゃんは、年少の妹、赤ちゃんの弟と一緒にレッスンに来ています。
Nちゃんはお母さんを手助けできるしっかりものです。
妹のKちゃんは最近、何でもお姉ちゃんの真似をしたいお年頃。
「私もピアノをやりたい〜」ということで、この度リズムガーデンピアノ教室の生徒さんになりました。

レッスンの日には楽譜の入ったバックを大事そうに肩にかけてやってきました。
でも小さいのでバックが床につきそう。なんとも可愛らしい姿です。


幼児の指導は、運動的感覚や視覚的な感覚などを伴うことが効果的といわれています。
教室では、
○歌うこと〈オリジナルのドレミの歌で音と階名を一致させる〉
○動作を伴って音符の長さを捉えること〈例えば音符の長さをボールを使ったり、手遊びをしながら覚える〉
○重なり合った音に印象を持つこと〈和音を聴いて色の旗で識別する〉など、
子供さんのペースに合わせて行っています。

いくつもアプローチがかわる40分のレッスンはあっという間で、だんだんと音感や読譜力がついていきます。
Kちゃんのこれからも楽しみです。


2024年01月23日

新年



2024年、新しい年が始まりました。
元旦から厳しい毎日をお過ごしの方々がおられるので胸が痛みます。
「今できること」を考えるお正月でした。


今年最初のレッスンは、入会後初めてレッスンを受ける年長のEちゃん。
ご挨拶から楽しみにしている様子が伝わってきます。自分で音符を読み、弾けるようになると、とてもうれしそうな笑顔になりました。


これからも生徒さんの「できた!」を積み重ね、一歩先へ行きたい気持ちになるよう、指導いたします。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様が日々お健やかに過ごせますように。



2024年01月09日

クリスマス



昨日はピアノ教室の小さな発表会「お勉強会」でした。
この会で発表する曲は、だいたい生徒さんたちが弾いたことや聴いたことのある、日頃レッスンで使用している教則本から選んでいます。
身近な曲にすることで演奏に関心を持ってもらうことがねらいです。
生徒さんたちは真剣に聞き入っていました。
1年の締めくくりとしての発表会でもあり、終わった後は皆、緊張も解け、晴れ晴れとした様子でした。


さて、今夜はクリスマスイブ。
近隣のデパートは買い物客で賑わっています。地下の食品フロアへ行くと人気のお店には長蛇の列。せっかくなのでチキンを買って帰りました。

バッハ作曲の「クリスマス・オラトリオ」は、当時クリスマスの時期にキリスト教会で6日かけて演奏された大規模な楽曲です。管弦楽、語り、合唱、独唱など64の短い曲からなり、6部に分かれています。
その中にとても美しい、歌の入っていない管弦楽曲が1曲だけあります。

今回はこちらを紹介します。

メリー・クリスマス!
今年もこのブログに訪れてくださり、ありがとうございました。
どうぞよい新年をお迎えください。

 


2023年12月24日

公開レッスン②



先日、芸大教授の東誠三先生の公開レッスンを聴講しに行きました。
早朝に出発し甲府へ行くのも3度目。
今回は、これまでと違って少々緊張しています。聴講するだけでなく、私が公開レッスンを受けるからです。

ピアノ仲間のFさんも一緒なので心強いものの、初めてのことで嬉しいような怖いような…。
午前中は聴講し、午後にレッスンを受けます。ところが緊張してお昼のお弁当を食べられません。買っておいたチョコレートを、なんとか一粒口に入れました。


録画ビデオをセットして、いざレッスンの始まりです。
これまで曲の理解や奏法について聴講で学んで来ましたが、自分のレッスンとなるとその場ですぐに奏法を変えて弾かないとなりません。瞬発力と集中力が要ります。
レッスンでは自分の演奏をとても細かく「聴き」、ペダルを使う「音作り」などをご指導頂きました。

公開レッスンが終わったのは陽も落ちる夕暮れ。
帰りの電車でほっとひと息ついて、残っていたチョコレートを食べると、甘く美味しく感じました。


私が学びを続けることで、お教室の生徒さんへの指導にあらたな切り口が増えると実感しています。
一緒に頑張りましょう!


2023年11月24日

ギターコンサート



芸術の秋。
今回はギターの演奏を聴きに行きました。

スペインのギタリスト、ラファエル・アギーレは、13の国際ギターコンクールで優勝し弱冠16歳でオーケストラ共演するなど、天才とも呼ばれています。

400席が満席のホール。38歳で、まだ青年の面影を残すアギーレが拍手で迎えられた後、静寂のなか、優しく切ないギターの音が響きます。多様で上品な音色と、一切のよどみないテクニックは素晴らしく、観客はひとつになったように惹き込まれました。

プログラムの前半はメンデルスゾーン、ショパンなどのクラッシック音楽で、特にギターによる「バッハのシャコンヌ」は心に沁みました。

後半はスペイン、中南米の音楽。ギターを叩いたり足踏みの音があったりと、フラメンコのような舞踊風です。情熱を感じる演奏でした。
プログラムが終わってもアンコールの拍手が鳴りやみません。
3度も出てきて演奏し、最後は客席からのリクエストに応え『アルハンブラの思い出』を聴かせてくれました。

この日は高校の同級生のPさんと久しぶりに再会し、一緒に聴きました。
コンサートが終ると、美味しいペンネを食べつつ、懐かしいおしゃべり!
いい夜になりました。


ではラファエル・アギーレ『アルハンブラの思い出』を紹介いたします。


2023年10月10日

中田喜直展



やっと訪れた秋らしく爽やかな日。どこかへ出掛けたくなりました。
そこで、最寄り駅から2つ隣の駅にある「横浜市歴史博物館」へサイクリングを兼ねて行ってみました。

今、博物館の特別展では作曲家中田喜直先生の「生誕100年中田喜直展」が催されています。
中田先生は歌曲「ちいさい秋みつけた」「夏の思い出」や、全国の学校校歌を数多く手掛けました。近隣のあざみ野中学校の校歌も作曲しています。
特別展では先生の半生を写真や直筆の譜面、戦時中にやり取りした手紙などでたどっています。

展示品を見ていくと、芸大卒業時の寄せ書きがありました。田村宏、井口愛子、畑中良輔、辻久子…、昭和のクラッシック音楽界の重鎮達が名を連ねており、才気あふれる学生時代だったのがわかります。

戦後は「よい詩によい歌」という考えのもと、仲間と「ろばの会」を立ち上げ、童謡を作曲し発表していました。
メロディーが詩の情緒を引き出すような歌。先生は、「言葉(歌詞)とメロディがよく合っていて、自然にきこえないとならない」と仰っていたそうです。

子どもたちのための良い音楽を追い求めた中田喜直先生は、最期の時まで創作を続けました。
絶筆となった楽譜、感謝の思いを綴った手紙も展示され、先生ご自身が豊かな心をお持ちだったとわかる特別展でした。


2023年09月30日

発表会



先日、横浜市のホール「みどりアートパーク」で発表会を行いました。
ピアノはヤマハ最高級のCFX。
大変美しい音色で、小さな音もまろやかに遠くまで響きます。
クラッシックを演奏した生徒さん達は、のびのびとした音を出し、J-POPを演奏した生徒さんは、サウンドをうまく表現できました。


独奏が終ると連弾の部となり、お父様やお母様、小さな生徒さん同士での演奏です。会場から暖かい笑いが起こるなど、始終和やかな雰囲気でした。

今回は音楽を専門的、かつ幅広く勉強するため他の先生へ移ったK君も参加し、私と一緒にフォーレの「キティワルツ」を連弾してくれました。
成長した彼の演奏を聴くと感慨深く、益々将来が楽しみになりました。

年に一度の大きな舞台。
そこに上がるまでの日々も含めて
大切な思い出になって欲しいと願っています。



2023年09月03日

花火



横浜へ花火を観に行くことになり、母の遺してくれた浴衣を着ていきました。帯は新調し、気持ちは新しく。


「みなとみらいスマートフェスティバル」という名の催しは、25分間で2万発もの花火が次々と打ち上げられます。いわゆる儚く散る花火とは違って、圧倒される華やかさ。すっかりハッピーな気分になりました。

「花火」というドビュッシーのピアノ曲は、ドビュッシーがパリ祭の花火を見た印象を作曲したといわれています。
始まりはかすかにきらめく音の粒たち。次第にたくさんの音が鍵盤を駆け巡り、万華鏡のように移り変わります。美しく怪しげな光や、はじけては散る花火が目に浮かびます。
曲の最後はフランス国歌のメロディーが遠くから聴こえてくるように演奏され、幻想の時が終わります。

今回はフランスのピアニスト、M・ベロフの演奏を紹介します。

2023年08月02日

公開レッスン



ピアノ仲間のFさんから、ピアニストの東誠三先生の公開レッスンをうけるとの連絡がありました。
「場所が甲府なんだけど、レッスン聴講できるから、一緒に行きませんか?」
素晴らしいチャンスなので、快諾しました。

当日は、八王子駅のあずさ5号で新宿から乗車してくるFさんと待ち合わせ。
あずさの到着時刻は少し遅れましたが無事に出会い、ちょっとした旅行気分で出発です。

東誠三先生は東京芸大教授ですが、時々ピアノ愛好家にもレッスンしてくださいます。
今回の対象者は中学生から大人までの幅広い年齢層でした。

公開レッスンで、東先生が繰返し仰っていたのは、演奏時の姿勢は常に腰を据えておくこと、鍵盤をタッチする指先の意識についてでした。
また、先生はあれこれと言い切るのではなく、生徒が実感として理解できるように、具体的、あるいは比喩を用いて説明なさいました。
今回の聴講で「伝える方法の引出し」が増えました。


今年ももう、折返しの時期。
下半期はピアノ教室の発表会やお勉強会、ピティナステップも控えています。
生徒さん達にも新しい気づきをたくさん経験し、練習にやりがいを感じて欲しい。
一緒に頑張りましょう!


2023年06月26日

のびのびレッスン



「音楽家を成長させる教える技術」という本の言葉より。
『教師の仕事は生徒一人ひとりがスキルを高め、自立していけるように、学びの順序を適切に決めていくことである』

このとおり、導入期の生徒さんには、興味の芽を摘まず、かつ無駄のない指導が必要だと思っています。


先日、年中さんの可愛らしい女の子が体験レッスンにやってきました。
「◯ちゃん(自分のこと)これやってみたい〜」「この本見てみたい〜」
初めてのことに興味津々です。

「じゃあ、まずはお指の体操からしてみようかな?」
両手を合わせてそれぞれの指先を突合せたり、回したりします。《手先のトレーニング》
ひとつの課題が終るまで集中できています。
けれどすぐに「◯ちゃん、つぎはお絵描きしたい〜」
「はいはい、じゃあこのホワイトボードにある線(五線が印刷してある)のところにマルをかけるかな?」《音符の配列》
「◯ちゃん、ピアノひきたい〜」やる気があって大変よろしいです。
「そうね、ピアノ弾きたいね。音を出してみようか。高い音はどちらかな?」《音の高低の認知》
指示行動はきちんとできます。

興味が移っていく中、どうレッスンにつなげるか、集中しながら柔軟に対応していきます。最後には、◯ちゃんは私にとびきりの笑顔を向けてくれました。

体験レッスンを終えると、すぐにご入会のお申込を頂きました。「ピアノ教室リズムガーデン」の仲間入りです。


今年度も一人ひとりに合わせた、よりよいレッスンをして参りたいと思います。

生徒さんは定員となり、新規の募集は終了いたしました。
空き枠が出ましたらホームページにてご案内いたします。


2023年05月14日




鎌倉にある鶴岡八幡宮へお花見に行きました。

まずは、八幡宮までの鳥居をつなぐ参道「段葛(だんかずら)」の桜を観賞。
500メートルもある道の両脇に植えられた満開の桜は、花のトンネルです。幻想的な風景が続き、たくさんの人が桜の世界へ吸い込まれて行くように見えました。

境内の名所である源平池の桜は水面を覆うように伸び、池に映る花の影が趣きを引き立てます。

本宮に上がる大階段にさしかかる時、「笙(しょう)」の音が聴こえてきました。
見ると白無垢の花嫁さんがやってきます。結婚式が始まるようでした。
「笙」「篳篥(ひちりき)」「龍笛(りゅうてき)」による雅楽は、瞬く間に辺りをみやびで神聖な空気に変えます。1300年前からあるこの音楽に、人々が影響を受けてきたことを考えると、感慨深いものです。

所々に幹がごつごつとして年輪を重ねた、含蓄ある風貌の桜をみかけます。
長く大切に保たれてきたのがわかり、歴史を感じました。


2023年04月01日

父の思い出



テレビではWBCの野球中継が始まり世界を相手に活躍する選手に湧いています。
そういえば、テレビ観戦が好きで、野球はもとよりお相撲や駅伝もよく観ていた亡き父。
お正月の大学駅伝を毎年見ては「頑張ってるなぁ…!」と目を潤ませるほど感激していました。
私はそんなお茶目な父に可笑しみを感じたものです。


さて、昨日は幼馴染のPさんと一緒にカタルーニャ料理を頂くために渋谷へ出掛けました。
ちょうどスペイン音楽についての本があったので、電車のなかで読んでいると、20世紀の偉大なチェリスト、パブロ・カザルスのお話が出てきました。
平和活動家でもあった彼は、演奏家として生涯、反戦と平和のメッセージを訴え続けたことで有名です。
「祖国で独裁政権が続く限り戻らない」とフランスへ亡命。けれどもカザルスが存命中、政権は変わらず、祖国の地を踏むことはありませんでした。
カザルスの強い信念を持ったエピソードを読んでいくと「なんという誠実さだろう……」と、目頭が熱くなってきました。

まもなく渋谷に到着。
ふと、父のように感激屋になっている自分に気づき、こっそり泣き笑うのでした。



2023年03月10日

ダニール・トリフォノフ




先日、念願かなってダニール・トリフォノフさんの演奏をサントリーホールへ聴きに行きました。
長身で手足の長い、まだ31歳のロシア人です。
経歴は天才的で19歳でショパンコンクールを3位入賞したあと、ルービンシュタインコンクール、チャイコフスキー国際コンクールと名ただる国際コンクールで優勝。
オーケストラとのピアノ協奏曲を自作演奏し、アンサンブルも積極的に行うなど、世界で活躍しています。

今回のプログラムは古典派のモーツァルトから近現代のスクリャービンと、幅広いものでした。
テクニックは超一流で、難曲も技巧を感じさせず自然に弾きこなし、豊かな音色で聴く人を音楽に没頭させます。曲が終わると唖然としました。

特にラヴェルの「夜のガスパール オンディーヌ(水の精)」は夢のような時間。
波がゆっくりと弧を描くように聴こえるグリッサンド(鍵盤をなでるように演奏する)は忘れられないほど美しいものでした。

今回は、アンコールに弾いて下さったバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」がYou Tubeに載っていたので、紹介します。

2023年02月25日

音楽会



先日、企画したピアノの「弾きあい会」「大人の会」の2つが終わりました。
どちらの会も、参加して下さった方の年齢、ご職業は様々。
音色や感性もそれぞれ個性的で、皆さんの魅力が満載の音楽会となりました。

両方の会で私が弾いたのはブラームスの「間奏曲作品118-2」でした。
ブラームス晩年の傑作です。
一見、易しそうにも聴こえる曲の中には、幾重にもメッセージがあり表現するのが難しい、含蓄のある作品。
まだまだ、終わりのない勉強が続きそうです。


ピアノを練習すると、新しい体験や気づきもあり、楽しいものです。
音楽会はいい意味で緊張したり、ワクワクしたり。
こういった機会をあえて設けることで、今後も日々の生活に彩りを加えていただきたいと思っています。

またのご参加お待ちしています!


2023年02月09日

久方ぶりの




去年、企画を始めた「弾きあい会」が今週末に本番を迎えます。
ピアノ愛好家が集い、好きな曲を披露する会です。
参加者のプログラムは、バッハやベートーヴェン、映画音楽のエンリオ・モリコーネなど盛りだくさん。
私の演奏はショパン、ブラームスから1曲ずつと、メンデルスゾーンの連弾をします。

連弾のお相手は以前ブログにも登場した大学の同門生(大学のピアノの先生が同じ)Tさんです。
この曲【アンダンテと華麗なるアレグロ】は思ったより手強く、二人で合わせの練習を重ねるうち「久しぶりに恩師に指導していただこう」となりました。

先生のご自宅へ伺うと、当時と変わらないご様子。
レッスンも元気でパワフルです。

「ここ、全然二人合ってないね、もう一度」
「はいっ」
「左、音が大きすぎ!」
「はいっっ!」
「じゃ、ここから始めて、さんハイ!」
「!!」
決して「さん、ハイ」に遅れてはなりません。


レッスンを終え、ドッと疲れが出ましたがなんだか心地よい。
必死になる時間なんていつぶりかと考えても、はるか彼方で思い当たりません。


今週末まであと数日、先生への感謝も込めて演奏します。

2023年01月24日

楽器の楽しみ



ピアノ教室は今日から新年のレッスンを始めました。
2023年も、どうぞよろしくお願い致します。


今年は1月2日にピアノスタジオで弾き初めをしてきました。
お正月の時期も、スタジオは予約でいっぱい。音楽大学受験生の利用もありますが、スタジオの廊下ですれ違うのは、意外にも同年代の方が多いのです。

そのスタジオにはアメリカ製のコンサート用スタインウェイが置いてあります。
自宅にあるYAMAHAのピアノよりもかなり大きく、響きも豊か。鍵盤の微妙なタッチにもよく反応します。

アコースティックの楽器は音が空気を伝わるのがわかり、混ざり合う響きがとても魅力的です。
楽器を楽しむのはいつからでもできますし、生徒さん方もぜひいろんなピアノを弾いて、良さを味わってほしいと思います。


2023年01月07日

心をはぐくむ



先日、生徒さんのお母様が保護者演奏会の「大人の会」に出演するため、レッスンに来られました。生徒のMちゃんも一緒です。

すると「先生、楽譜持ってきたの。聴いて、聴いて!」
Mちゃんはお母様より先にピアノに座り、新しい曲を次々と弾いています。
私が驚いていると、お母様が言いました。
「お勉強会が終わったらもう、ずっと弾いているんです。」

一昨日行った小さな発表会で何かを感じた様子です。
Mちゃんの心が動き、練習につながったのでしょう。


音楽の「情操教育」とは、音そのものや音楽に触れ、心が動く「いとぐち」を見つけられるよう手助けをすること。
音楽を通して心のありようを知り、表現します。
これは生きていく時の大切な力を育むものと考えます。
教室の経験で生徒さん達の心がじんわり強くなっていって欲しいと思っています。



2022年もあと数日。今年もこのブログをご覧下さりありがとうございました。
世界は様々な出来事で溢れていますが、新しい年も、皆様が心豊かに過ごせるよう願っております。


2022年12月28日

もみの木



はやくももう12月。
街のクリスマスイルミネーションやクリスマスソングが、今年1年を振り返る気持ちを後押しします。

クリスマスにツリーとして使う「もみの木」は樹齢150年以上、長いものは1000年にも及び、いつでも青々とした常緑樹のため、学名は『アビエス(永遠の命)』といいます。
実際、葉には抗菌作用もあり、古くからヨーロッパの人々はもみの木を家に入れて病から身を守ったといわれています。

そんなもみの木をフィンランドの作曲家シベリウス(1865年〜1957年)がピアノ作品にしています。
シベリウスはオーケストラ曲、とりわけ交響詩『フィンランディア』でよく知られていますが、この叙情的なピアノ曲も大変人気があります。
フィンランドの美しい雪景色の中で、孤高に生きる「もみの木」。頼もしい姿が心に寄り添ってくれるような曲です。

今回は長くフィンランドに住み、この曲を日本に広めたピアニスト舘野泉さんによる演奏を紹介します。




2022年12月08日

ザルツブルガーノッケルン



ある日、テレビを見ていると作曲家ヨハネス・ブラームスについての放送が始まりました。
生い立ちやエピソードと共に、ブラームスの好きだったお菓子を俳優の瀬戸康史さんが作る『グレーテルのかまど』という番組です。

お菓子はドイツに古くからある
「ザルツブルガーノッケルン(ザルツブルグの山)」。
その名の通り、ふわふわのメレンゲを山が連なっているような形に焼いたものです。


ブラームスは甘いものが大好きでした。
好んだのは貴族の食べるような凝ったお菓子ではなく、家庭的で素朴なもの。
家庭のお菓子としてポピュラーなこの「ザルツブルガーノッケルン」を、母親のヨハンナはたびたび焼いたはずです。

卵と少しの小麦粉と砂糖でできるので、私もチャレンジしました。
卵白は電動泡だて器を使うと、あっという間にふわふわです。けれどブラームスの時代、しっかりと泡立てるにはきっと腕が痛くなるほどだったでしょう。ヨハンナの愛情を感じます。

10分ほどオーブンで焼き、山頂にパウダーシュガーの雪を降らせて出来上がり。
課題の残る出来ではあったけれど、少年ヨハネスの気持ちになってふわふわを味わいました。


2022年11月24日

2台ピアノコンサート



Tさんは大学時代の同門(ピアノの先生が同じ)の同級生。
彼女が2台ピアノの演奏会に出演するので和光市のサンアゼリアホールへ聴きに行きました。

この会は、午前中から夕方にかけて、交響曲やお客さんに馴染みのある曲などを中心に2台のピアノで演奏します。
ピアニストは全部で14人。2人で1曲ずつ交代です。
途中、子供さんが2台ピアノにチャレンジする部もあったりと盛だくさんで、ピアニストの手元が舞台の背景に映る演出には、演奏の臨場感が高まったように感じました。


私は午前中の部が終わると、いったん退出し近隣の公園へ休憩に行きました。
大きな木が見事に紅葉して、青い空に映えます。
芝生広場には微笑ましい家族、ランニングコースで走る若者もいました。


夕方の演奏では、規模の大きい2台ピアノ曲が披露されました。
Tさんは、濃紺のドレスで登場。とっても素敵です。
曲はローゼンブラット(1956〜)の「カルメン・ファンタジー」という、ロシア人作曲家らしい息の長いフレーズの中に、ジャズ風な和音とリズムが混ざった、かなりカッコイイ現代曲です。弾き終えた彼女とそのお相手に心からの拍手を送りました。


演奏者のうち半数は同年代の同窓生。大いに刺激をもらった日となりました!



2022年11月07日

ユーモア



交響曲の父といわれるヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)。
宮廷音楽家としてユーモアのある音楽を作りました。
いちばん有名なのは交響曲45番「告別」。
ハイドンの仕えているエステルハージ公がハンガリーの別邸で夏を過ごしているものの、なかなかオーストリアに戻りません。単身赴任で同行してきた楽団員達は、はやく家族の元へ帰りたい。そこでハイドンは演奏中に団員が次々と舞台から退出するという曲を作り演奏しました。
翌日には団員の念願が叶ったそうです。

今回はこの曲、指揮者バレンボイムのユーモアたっぷりな演奏を紹介します。
(見どころは4:30から)

2022年11月01日

練習



街路樹の葉がだんだんと紅葉し、秋の深まりを感じます。
ピアノ教室では今年の締めくくりである12月の「お勉強会」に向けて、生徒さんの演奏する曲目が少しずつ決まってきました。
来年2月には生徒さんの保護者による、食事会付きピアノ演奏会「大人の会」も予定しています。生徒さんのお家では、ピアノ練習の時間が増えそうです。

超絶技巧で知られるフランツ・リストは、一日に15時間の練習に加え、鍵盤を重くして手を鍛えていました。一方で同世代のフィレデリック・ショパンは一日に3時間以上の練習を生徒に勧めませんでした。練習は集中力や感性が充分に発揮される時間内であることが大事であると言っています。
対照的ですが、どちらも熱心な練習です。

現代の忙しい子供さんにとっては、何時間も練習時間を確保するのはなかなか難しいもの。お家での音出しの時間も限られています。
そこで、教室ではある程度弾けるようになった生徒さんに、音を出さない練習を勧めています。これなら朝や晩の時間帯でも練習できます。
ピアノの蓋の上やテーブルの上で指を動かしたり、楽譜を見ながら頭の中で弾くのです。
「頭の中がはっきりとしていることは、良い演奏をする上で大きな部分を占めている。この頭を通して驚くべき多くの進歩を成し遂げることができる。」(音楽家を成長させる「教える技術」YAMAHAより)
楽譜には音符以外のことがたくさん書かれています。音を出さない分、そこに気づきやすくなり大変役立ちます。

忙しい中でも効率よい練習で上達できるとよいですね。


2022年10月10日



私の祖母はご機嫌が良いと、時々民謡を口ずさみました。
子供心に独特なリズムとこぶし回しが面白く、じっと聴いたものです。
テレビで見る民謡のピンと張った伸びの良い声も好きで、いつか本当の民謡を聴いてみたいと思っていました。


ある日、ネットであれこれ見ていると「唄う船頭さんがいる」とありました。
棹一本で舟を操りながら「げいび追分」という民謡を唄ってくれるのです。
舟下りは岩手県にある「猊鼻渓(げいびけい)」。
川が岩を浸食してできた断崖絶壁の渓谷です。渓谷に響く民謡を想像すると聴いてみたくなり、この夏訪れることにしました。


東北新幹線に乗り岩手県は一関市へ。バスに乗りかえ、のどかな風景を眺めながら40分ほどで到着です。

舟に乗り込むと、身長の3倍はある長い竿を持った船頭さんが待ち受けていました。この道25年のベテランだそうで、お話も面白く楽しい舟下りが始まりました。
川の両側には石灰岩がそびえ立ち、高いところは120メートルにもなります。豊かに茂る緑の木々は、秋になると美しく紅葉するそうです。

川では魚が勢いよく飛び跳ねます。
向かいに座っていた家族が魚の餌をまき始めました。
「それ、それっ」と餌巻きに夢中になっていると大きな魚が寄ってきたらしく大盛りあがり。
「せっかくなので魚でなくて景色を見てくださいね〜」と船頭さんのコメントに場が和みました。

舟下りも終盤に差し掛かると、いよいよ船頭さんの「げいび追分」の始まりです。
渓谷に響く唄声は、まっすぐに空気を通り抜け、ひらひらとまわるこぶしに彩られます。息の長い節(ふし)を聴いていると、こちらの呼吸も深くなり心が穏やかになりました。

舟下りのあとは世界遺産になった平泉へ。平安時代の遺跡を遺す平泉は、この地を詠んだ松尾芭蕉の句「夏草や兵どもの夢の跡」も有名です。

心に残る唄の響きと共に悠久を味わういい旅になりました。


2022年09月16日

発表会



先日、年に一度のピアノ教室リズムガーデンの発表会を行いました。
コロナの感染が続く中、幸い欠席者なく開催できました。


第一部の独奏が始まり、舞台袖で待っている生徒さん達は、緊張でカチコチ。
中には手のひらに「人」という字を書いて呑み込み、舞台へ向かう生徒さんもいました。30人くらい呑み込んだおかげか、いつも通りにしっかり演奏できました。

一度舞台に上がれば、途中で間違えたり、忘れてしまったりしても一人で解決しなくてはなりません。生徒さんには「間違えてしまったこと」よりも、「しっかりと最後までやりきったこと」を認め、励ましてあげたいものです。

第二部は連弾で、親子やお友達同士が中心の組合せになっています。
演奏するお母様も生き生きとした様子。発表会をお子様と一緒に楽しんで頂きたいと思っています。

毎年、生徒さん達の成長を感じる発表会。
来年に向けて、またスタートです!


2022年09月03日

イム・ユンチャン



今年の6月、アメリカで行われたバン・クライバーン国際ピアノコンクール。
優勝したイム・ユンチャンは18歳で史上最年少だそうです。
多くの人が彼の才能あふれる、音色豊かな演奏に驚き、感動しました。
そのイム・ユンチャンが演奏した「ラ・チ・ダレム変奏曲」は、モーツァルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」二重唱「お手をどうぞ」をもとにし、管弦楽と一緒に演奏される変奏曲です。シューマンがこの曲を知り「ショパン、とにかく天才だ!」と言ったことでも知られています。初めてウィーンでショパンが演奏したときには大評判となりました。

作曲したときは17歳だった、希望溢れる若者のショパン。その後の人生を思うと切なくなりますが、イム・ユンチャンの演奏はとてもフレッシュで、若いショパンと重なります。
今回はコンクールでの独奏曲版の演奏を紹介します。


2022年08月14日

ドイツ料理



先日、ドイツ料理の店 「ツムアインホルン」で、ランチをいただきました。
シェフの野田浩資さんは以前ブログで紹介した『音楽家の食卓』の著者です。

メニューは牛肉のグラッシュスープにカレーソーセージ、デザートにはシュトゥルーデルとベリーのシャーベット。
「グラッシュスープ」はドイツやハンガリーの煮込みスープで、パプリカという香辛料の効いたスパイシーな味付けです。これまで食べたことのないおいしさでした。

デザートの「シュトゥルーデル」は、甘く煮た果物をシュトゥルーデルという生地で巻いたもので、今回は煮たリンゴとチェリーが入っていました。
添えられた生クリームをつけて食べると、程よい甘さと酸味にコクが混ざってマリアージュ。忘れられない味です。

生涯のほとんどをウィーンで過ごしたシューベルトは、よくグラッシュスープを作り友人と食べたそうです。母親が料理人だったこともあって自炊が得意だったようです。

帰り際、野田シェフの本を持参したことを告げると厨房から出てきてくださり、記念撮影を快く引き受けてくださいました。




2022年07月26日

弾きあい会



先月、FさんからLINEが来ました。
私と同じく、オランダ人の先生にレッスンを受けていた方です。
『西本さん、お久しぶりです!』
『7月、音楽ホールがとれたので、気軽な弾きあい会をします。ぜひ西本さんも来て弾きませんか?』とのこと。

当時のレッスン仲間も誘っているらしく、皆に会いたいので参加しようかな…、と思っていると、『1人、持ち時間は30分です』と書いてあります。
30分近く弾いたのはかれこれ8年程前のこと。しかも、演奏は来月……披露する曲を用意するには時間がなく、ちょっと難しそうです。


迷いながら、その日は演奏会を聴きに行くため上野へ行きました。
前回のブログに書いた小倉貴久子さんのコンサートです。
モーツァルトの時代に使われたフォルテピアノやハープシコードによる演奏会で、舞台にはそれぞれ違う5台の楽器が置いてあります。
休憩時間になると、それらをカメラで撮影して良いとのアナウンスが流れたので、いそいそと舞台まで見に行きました。
すると、聞き覚えのある声が。
お顔を見るとなんと、そのFさんです。
マスクをしているのでわからないかなと思い、声をかけました。
「こんにちは……あの、西本です」「え?!」
お互いびっくり。
「さっきライン読んだところ……」
「うゎぁ、なんて偶然!まさか、今日会うなんて!
これはもう運命だわ〜、西本さん!」


というわけで昨日、弾き合い会に参加してきました。
演奏者は主催のFさん、懐かしいAさん、ベートーヴェンをこよなく愛するSさんや大人になってピアノを再開したというピアノ愛好家の方々。
私はショパンから5曲弾き、皆さんはバッハ、ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシー、ラフマニノフと様々で、それぞれ音楽愛にあふれた名演奏でした。

成り行きで次回の幹事を引き受けることになったので、今度は「今から」準備です。

それから、ピアノ教室の保護者演奏会「大人の会」も、そろそろ計画する予定です。ゆるく楽しく過ごすひととき。どうぞご参加下さい。



2022年07月04日

ピリオド楽器



先日、小倉貴久子さんの「フォルテピアノの世界」という演奏会へ行ってきました。
作曲家が生きていた時代の楽器(ピリオド楽器)による演奏会で、舞台には5台の楽器、チェンバロやクラヴィコード、フォルテピアノなどが置かれ、それぞれの楽器によるモーツァルトの演奏を解説とともに聴かせていだきました。

昨今はこういった演奏会が盛んで、来年にはピリオド楽器によるショパン国際コンクールも開催されます。
2018年、第1回として催されたこのコンクールでは、日本人の川口成彦さんが2位になっています。
現代のピアノとはまた違ったテクニックのいるピリオド楽器。
川口さんの演奏を聴くと、音は響き過ぎず耳に心地よく、各声部のモチーフや主題の輪郭がわかりやすいので音楽を身近に感じます。


今回は、ショパンの生家で1838年のパリで製造されたエラールというフォルテピアノによる川口成彦さんの演奏を紹介します。

2022年06月20日

読譜トレーニング



私達は普段、テレビの音、生活音、車や電車の音、お店の音楽などたくさんの音を聞いています。
ピアノを弾くときも、同じようになんとなく音を聞いてしまいがちです。
でも、音楽教育者のエドガー・ウィレムスは「演奏のためには意識的に聴く感覚を持つことが大事である」といっています。
さらに重要なのは、これから弾こうとする音をイメージする「内的聴感」で、自発的な表現へとつながる知的な聴覚であるとのこと。

小さな生徒さん向けのレッスンでは、そのための訓練を行っています。
ピアノの響きに耳を澄ましたあと、初見で弾いた短い曲を直ぐにもう一度、蓋をしたピアノの上で指を動かしつつ頭の中で音を鳴らします。そしてもう一度鍵盤で確認します。

生徒さんに「音、鳴っていた?」と質問すると、たいてい「きこえた」「右手だけだった」などの答えがかえってきます。
確認時、音楽的に弾けた場合は聴こえていると判断しています。
まずは音をイメージする。そして次に弾こうとする音も浮かんでくるようにレッスンを進めます。

ピアノを弾くときは、生活音から離れ、静まった気持ちで練習できると良いですね。
改まり、深呼吸してから練習をはじめてみましょう。


2022年06月03日



少しずつコロナ禍の規制も緩んできたので、ゴールデンウィークには箱根へ足を延ばしてきました。

小田急ロマンスカーで箱根湯本まで行き、登山鉄道に乗換えます。スイッチバックを繰り返すと、車窓からの景色はどんどん見晴らしが良くなっていきました。
目的の場所は強羅にある、先月オープンしたばかりの「ニコライ・バーグマン箱根ガーデンズ」https://hakonegardens.jp/

デンマーク出身のフラワーアーティストがデザインした森です。
入場時間に指定のあるチケットを、予めオンラインで購入しておきました。
人は少なく、チラホラと見かける程度。チップの敷かれた道を進むと、爽やかな新緑の木々と、鳥たちの声に囲まれました。


ブラームスは自然が大変好きで、毎朝早い時刻に起き、自分で淹れたコーヒーを飲むと森へ出掛けました。
「ピアノ演奏を早く上達させるにはどうしたらよいですか?」と尋ねられた時にはこう答えていました。
「とにかく森を歩くことだよ」

風にそよぐ葉の音が絶え間なくフレーズを生み、鳥たちのさえずりは美しいモチーフを奏でる……。
演奏には自然との共振が必要なのかもしれません。


「箱根ガーデンズ」では、カフェで購入したものをかごに入れて森の中で食べる、ちょっとしたピクニック気分もあじわえます。
まだ3分の1しか開放されていないそうなので、今後も楽しみです。


2022年05月15日

音楽家とモード



新宿にある文化服装学院の博物館へ行きました。
「ヨーロピアンモード」と題した展示会です。
18世紀のヨーロッパのドレスから現在までの女性モードの変遷を見ることができます。
クラッシックピアノの作品が多くできた時代を感じられたら、と見学してみました。

博物館は展示物に影響がないように明かりが抑えられ、少しひんやりとした温度になっています。
1700年頃のロココ時代のものから始まる展示品は、絹製で豪華な刺繍がほどこされています。まるでモーツァルトの描かれた絵画から抜け出てきたようで、思わず近づきました。

1800年頃のベートーヴェンの活躍した時代は、エンパイアスタイルといって、ドレスは古代ギリシャの服を模したハイウエストで直線的なデザインになり、薄くやわらかな生地が胸の下からすとんと落ちるすっきりとしたシルエットになります。
でも、生地が薄いために風邪で高熱を出す女性が続出したとか。

ショパン、リストのいた19世紀半ばからは全体的に丸みを帯びたロマンティックスタイル。
スカートは釣鐘状に広がり、膨らんだ袖が特徴です。この時期から産業革命の影響で生地にプリント柄が登場します。
当時の女性は流行りのドレスでショパンやリストのいるサロンへ出かけたはずです。

「音楽」同様、「服」も社会背景と深くかかわりながら変化してきたことがよくわかる展示会で、大変興味深く拝見しました。
文化服装学園博物館「ヨーロピアンモード」は5月18日(平日のみ)まで催されています。


2022年04月27日

選曲



今年も夏に発表会を行う予定です。
少しずつ生徒さんに合う曲を選曲中で、これはプレゼントを選ぶのに似ています。

前回の発表で、アップテンポの曲を楽しそうに弾いていた3年生女の子に、今回もまた気に入ってくれる曲はないものか………と思いを巡らしていました。

ある日、その彼女がイラストの書かれた服を着てやって来ました。
「このお洋服は、なんの絵が書いてあるの?」
「…………きめつ……。」
「きめつ?」
すると、付き添いのお母様からフォローが。
「鬼滅の刃のキャラクターです。今、すごく好きで毎日見ているんです。」
「じゃあ、発表会に鬼滅の刃の曲を弾いてみる?」
すぐにコクリとうなずきました。

ピアノに編曲したポップミュージックの楽譜というのは、リズムを読み取るのが難しいものです。
今回も楽譜を見ると、やはり難しそう………ところが心配をよそに生徒さんは1週間後、7ページの曲を8割方弾いてきました。
「弾きたい、という気持ちが生徒さんを前向きにする」のを目の当たりにし、驚きと嬉しさがこみ上げました。


発表会で演奏する曲は、それぞれの生徒さんにとって大切な一曲になって欲しいと思っています。


2022年04月08日

作曲家を知ろう⑤



ニコロ・パガニーニ(1782~1840)は鬼才といわれるヴァイオリニスト・作曲家です。

当時、それまで演奏されたことのないような高度なテクニックを用いた曲に、聴衆は驚き、ヨーロッパ中が彼を称賛しました。
シューマン、シューベルト、ショパン、リストなど、たくさんの作曲家がインスピレーションを受け、作曲しました。リストの「ラ・カンパネラ」はパガニーニのヴァイオリン協奏曲2番の3楽章を編曲したものです。

奔放な性分のパガニーニは、賭博にあけくれ多額な借金をかかえたり、作曲した楽譜を他人に決して見せないなど、なにかと逸話の多い人物ですが、華やかで技巧的な作品は今でも人気があり、よく演奏されます


一方で、あまり知られていませんが、ギターの曲も作っていました。
ヴァイオリンとギター、ギターソロの作品は、ヴァイオリンの曲とは印象がだいぶ違っています。作風は古典的で素朴。多くは若い頃の作品で、青年パガニーニには女性ギタリストとの恋もあり、青春が垣間見えるような素敵な曲です。

今回はギター曲、ルイージアッタデモさんの「37のソナタ」からno.4 Rondoncinoを載せます。




2022年03月20日

自由



3月1日はフレデリック・ショパンの誕生日。

ショパンが20歳で音楽家としてウィーンへ旅立とうとした1830年ごろ、世界的にコレラが流行し、ポーランドではロシア帝国に対して起こした武装反乱で多くの人が亡くなりました。
祖国ポーランドにいる愛する家族、友人に会えず、ショパンは孤独な気持ちで過ごしました。そしてその思いは生涯続くことになります。

ショパンの曲は優美なだけでなく、しばしば激情的でもあります。
25歳のころ書かれたスケルツォ1番は、ざわざわとした音たちが強くこみ上げ、うねりを見せます。激しくうごめく音は何かを訴えるようです。
この激情に挟まれた中間部は大変美しく、ポーランドのクリスマスキャロルが引用されており祖国への想いがうかがえます。


最近、コロナ渦を経験し「自由」のありがたみを感じています。
会いたい人に会い、行きたいところへ行ける。
「自由」を大切にしたいものです。


今回は2010年ショパンコンクール優勝のユリアンナア・ヴデーエワさんによるスケルツォ1番の演奏です。




2022年03月01日

お菓子の話




近所のショッピングモールを通りかかると今はチョコレートフェア。
いろんなお店が出店されているなかで列のできているお店がありました。ウィーンの老舗菓子店《デメル》の売場。《デメル》は1786年創業で、後にハプスブルグ家御用達となる菓子店です。

フレデリック・ショパンは《デメル》の「スミレの砂糖漬け」がお気に入り。
体の弱いショパンのために、恋人ジョルジュ・サンドは毎朝一杯のホットチョコレートミルクをつくっていました。その中に「スミレの砂糖漬け」を落として飲んでいたそうです。


さて、チョコレートフェアの《デメル》を覗いてみると、半分以上が売切れ。
そうなると、なんだか買わないといけない気分に…。
最後尾に並んでそわそわと順番を待ちます。
無事にヴァレンタイン限定の美しいパッケージのものをひとつ購入。

海外旅行ができるようになったら、頑張ってウィーン本店《デメル》のカフェへ行こう!と夢がひとつ増えました。

2022年02月14日

聴こえる耳のために



日常的に音楽に触れることや、歌を歌うことで、音感は想像以上に養われます。

「音感教育」というのは、リズム、ハーモニー、強弱、速度、音色などを養って音楽の基礎を作ること。
幼児期から取組むことで「聴く力」がつき、集中力が増すといわれています。
楽譜に書かれた音楽を頭の中で響かせる「内的聴感」ができてくると、音楽をイメージし、創造することへつながっていきます。


レッスンで使っている石黒加須美先生の教材「まいぴあの」は、リズム豊かな手遊び要素を含んだ、短く情緒的な曲がたくさん。
本教室では、これを覚えて歌うことで音楽の基礎を養っています。
掲載された曲の伴奏が無料ダウンロードできるので、生徒さんはお家でも手軽に歌うことができます。

生活の中でたくさん音楽と親しみ、素敵な演奏への伸びしろを増やしましょう!


2022年01月27日

1月



2022年、新たな気持ちでレッスンを始めています。

先日は急に寒くなり雪が降りました。
寒い冬に聴きたい曲といえば、チャイコフスキー作曲の小品集「四季」の《炉端にて》。
「四季」は、チャイコフスキーがロシアの音楽雑誌に依頼され、1月から12月まで月ごとに掲載した作品をまとめたもので、季節感のある美しい曲集です。
そのうちの1月《炉端にて》は、題名のとおり、冬の暖炉を思わせる曲。

今回は矢澤一彦さんの演奏を紹介します。聴いていると暖炉の火をじっと見ているような気持ちになる、素晴らしい演奏です。(YouTubeでは画像はなく、音源のみです)


本年もどうぞよろしくお願いいたします。
皆様にとって、心に寄り添う音楽に出会うような良い年となりますように。


2022年01月09日

2021年



本日は大晦日。今夜は除夜の鐘がなりますね。

ピアノ教室は「お勉強会」も終わり、冬休みです。
たまる一方の楽譜や本の整理をする傍ら、来年のレッスンのために、優れた生徒さんを輩出している先生のインタビューを聞いたりしています。

その中に、ピアノのタッチは、
「鐘をつくのに似ている」というお話がありました。
鐘を突く時は、一度橦木(しゅもく)を引き寄せてから突くのですが、ピアノにおいては、手のひらや、腕全体を使ってそれを行う、というわけです。
表現するためのタッチはいくつもあるので、よく音を聴きながら習得できると良いですね。


今年もこのブログにお付合いくださりありがとうございました。
コロナ禍は今しばらく続きそうですが、皆様が健やかな新年を迎えられますよう願っております。


2021年12月31日

がんばる気持ち



いつも明るい年長の生徒さん。嬉しいときには「よっしゃ~」と拳を上げてガッツポーズをする男の子です。

ところが、今回のレッスンに元気なくやってきました。
「……先生、ボク、お勉強会の発表で2曲弾きたい。今から頑張って練習する。」
「え?……会は明日だからね。ちょっと間に合わないかな。」
小さな肩をガックリと落とし、うなだれてしまいました。

以前に練習して合格した曲を弾くのはどうかと、年長さんながら食い下がってくるしっかり者。とはいえプログラムも作ってしまったのでこのまま1曲となりました。

お迎えに来たお母様に事情を伺うと、プログラムで年少の生徒さんが3曲弾いていると知り、もっと頑張りたくなったとのこと。
頑張りたい気持ちが湧くなんて、なんて素敵なんでしょう。
次回の発表会に目標を向けて取組むことになりました。
 
お勉強会は発見の場。
会を通して、上達のきっかけを掴んで欲しいと思っています。


2021年12月26日

花束



週末はベートーヴェンをこよなく愛する坂田さんのホームコンサート。
お仕事をする傍ら6年かけてベートーヴェンピアノソナタを全曲演奏するという偉業を、今回で達成します。

これはもう、お花を贈ってお祝いしたい。
事前にインターネットであれこれと花束の写真を検索し、イメージを固め、いざお花屋さんへ向かいます。
気に入った花束の画像を見せました。

「週末に、こういう花束を作って欲しいのですが」
「これは………アーティチョークですね。今、店には置いてないなぁ。」
「花はアーティチョークでなくても構わないです。こんな雰囲気で。」
ためしに、いくつかの花を花束風にまとめてくれました。

店の花は3、4日前に問屋さんで仕入れをするので、早めに注文すれば希望に近いものを用意できるそうです。

当日、出来上がった花束は大きなダリアをポイントにした、思った以上に豪華な仕上がりになっています。花瓶に活けてもきっと素敵でしょう。

会場を訪れてすぐにお渡しし、花は他の方からのフラワーアレンジメントと共に、ピアノの傍らに置かれました。

会は和やかで、いつもより少し華やかな雰囲気。
最後のベートーヴェンソナタ32番の演奏が終ると、大きな拍手が沸きました。


2021年11月29日

演奏会用アレグロ



19世紀後半に活躍したスペインの作曲家エンリケ・グラナドス。以前、講師演奏で「演奏会用アレグロ」を弾きました。
作曲された当時はロマン派後期。民族音楽への回帰が強まる中、グラナドスはショパンに憧れます。
「ショパンのショと聞いただけでうっとりするんだ……」

スペインと優雅で上品なパリが合わさったようなこの曲は、マドリード音楽院の作曲コンクールで、一等賞を獲得しています。

曲想が思い浮かべば、奇異なほど夢中になるグラナドスでしたが、懐が深く後進の指導のために「アカデミア・グラナドス」を設立しています。
スペインの世界的女性ピアニスト、アリシア・デ・ラローチャはこのアカデミーの卒業生です。
今回はそのラローチャの演奏を紹介します。


2021年11月09日

ショパン



先日、ショパンコンクールが終わりました。反田恭平さんが2位、小林愛実さんが4位と、日本人がふたりも入賞しました。
反田さんは受賞後のメッセージでこう語っています。
「ショパンさん、こんなに素敵な人生にしてくれてありがとう。」


ショパンの命日は1849年10月17日。亡くなった3年後、フランツ・リストによりショパンの伝記が出版されました。
各国の言葉に訳され、広く知られた本ですが、今年の夏に新しい邦訳が出たのでショパンコンクールに合わせて読んでみました。https://sairyusha.co.jp/products/978-4-7791-2765-6 

ショパンの作品、演奏、ポーランド人としての誇り高さや上品で慎み深い人柄について……そして最期の時。細かな作品の分析はなく、ショパンと間近で過ごしたリストが、共に生きた同士として書いたものです。
当時、オーケストラ曲を作るのが巨匠と言われる中、ショパンがピアノ作曲に留まったことを「自らの才能を最高に発揮する選択」、「献身的な姿勢」と称賛しています。
また、「後世の人々は間違いなく今よりも高く重大な地位を彼の作品に与えるはずである」とも書いていて、まさしくその通りになりました。


リストの詩的な比喩の多い文章で19世紀に触れながら、素晴らしいコンテスタント達の演奏を聴き、ショパンに想いをめぐらすひとときでした。


2021年10月24日

ヴァイオリン



新横浜の雑居ビルにある弦楽器工房「拓蔵」。職人は中川拓さんです。

父から譲り受けた古いバイオリンのメンテナンスをお願いしていたので、受取りに行きました。
「できましたよ。弾いてみますか?」
「私は弾けないんです。代わりにお願いします。」

艶がありドラマティックな音色が響きました。

帰宅して早速、弓に松脂を塗り、見様見真似で構えて弾いてみます。ところが、まるで叫び声のような音。
やっぱりきちんと弾けるようになってみたい……。
1から習ってみれば、初めてピアノを弾く生徒さんの気持ちがもっとわかるようになるかもしれません。音楽の理解もきっと深まるはず。
いつか習ってみようと思います。

You Tubeでヴァイオリン曲をあれこれと検索してみました。
今回はオランダの女性ヴァイオリニスト、ジャニーヌ・ヤンセンによるチャイコフスキーの「メロディ」を載せます。



2021年10月07日

作曲家を知ろう④



ロシアの作曲家、セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)。
愁いのあるメロディ、息の長いフレーズに、雄大なロシアのイメージを思い浮かべる人も多いでしょう。
ドラマティックで重厚な和音の音楽はとても魅力的です。

辻井伸行さんがバン・クライバーンコンクールで弾いたラフマニノフピアノ協奏曲2番には多くの人が感動し、話題となりました。
https://youtu.be/dGX3temma5Q


ラフマニノフは、繊細で簡単には心を開かず、仏頂面だったと言われています。
貴族の家系に生まれながら、父親の散財で没落してしまい両親は離婚。
親元を離れ、寄宿しながらモスクワ音楽院で学びました。
次第に作曲にも興味をもちだしますが、師匠のズヴェーレフは作曲を禁じ、ピアニストとして精進するよう厳しく言いつけます。しかしラフマニノフは作曲への思いが強く、師匠と袂を分かちました。
ところがその後、作曲した交響曲は酷評、文豪トルストイには作品を否定され挫折します。ノイローゼになるほど苦しみますが、ときを経て蘇りあのピアノ協奏曲第2番によって、作曲家、ピアニストとして成功を果たしました。

第一次世界大戦、祖国ロシア革命と厳しい時代の中で、40歳半ばに亡命。スイスやアメリカに拠点を移します。
以後作曲することは減りましたが、ヴィルトゥオーゾといわれる超絶技巧をもつピアニストとして多忙な日々をがんで亡くなる直前まで続けました。


浅田真央さんがオリンピックのフィギュアスケートで取り上げたプレリュード「鐘」は19歳の時の作品。早熟な天才だったことがわかります。
当時もラフマニノフ自身が弾き飽きるほど大人気の曲でした。
ロシア教会の鐘の音は人々にとって信仰と生活の支えであり、ロシアの作曲家はしばしば作品に用いています。


今回は、ラフマニノフ自身による演奏のプレリュード「鐘」を載せます。


2021年09月14日

発表会



日曜日は、ピアノ教室の発表会でした。
コロナウイルスがますます蔓延する中、開催するかどうか迷いましたが、生徒さん達にとってハレの場がまたしても無くなり、閉塞感を感じるより感染対策をしつつ開く方がよいと決断しました。


本番となるとやっぱり緊張……。
舞台袖で、小さなピアニスト達は神妙な面持ちです。
一人ひとり、これまでレッスンしてきた日々を思いお越しながら舞台へと送り出します。
「頑張って!」「いつもどおりね!」

演奏が終わり、戻って来た時はホッとした笑顔に。
その表情を見ると、私も心から嬉しくなります。
生徒さんにとって不本意な演奏になったとしても、これまで頑張って練習してきたものがなくなることはありません。たった一人でプレッシャーの中やりきった事を思うと、感動するものです。

親子連弾の中には、ピアノを初めて弾くお母様も。
皆様、この会のためにお忙しい中練習して下さいました。
フィナーレの連弾「ラ・ラ・ランド」の劇中歌「アナザー・デイ・オブ・サン」は、5年生によるワクワクする様な演奏でした。時間を合わせて二人で練習した成果が出たようです。


生徒さんの「楽しかった!」「今度は(プログラムの)この曲が弾きたい!」といった感想を聞くと、私も元気をもらいます。

また来年。
楽しい会にしましょう!


2021年08月25日

寄り添う



先週はピティナコンクールの特級3次予選が行われ、セミファイナリストが決まりました。
そのうちの今泉響平さんはモーツァルトピアノ協奏曲を演奏し、美しく澄んだ音が動画からも伝ってきました。

今泉さんへのインタビューで印象的だったのは、「自分の生徒もコンクールに出ているから頑張ってほしい」とピアノ教師としての一面を覗かせたところ。ご自身が注目されているなか、生徒の心配が思わず口から出てしまう様子に、きっと良い先生なのだろうと思いました。

94歳のピアノ教師、セイモア・バーンスタインは、著書【心で弾くピアノ】で「生徒自身の人間的成長のために関心を寄せるのは教師としての私の第一の責任である」と書いています。この本を読むとセイモア先生が教師として生徒に愛情と関心を持って接していることがわかります。

少し前に、そんなセイモア先生の人柄や日常が詩的に語られているドキュメンタリー映画を観ました。そのBGMが穏やかで優しい曲。
J.S.バッハの作曲といわれる教会カンタータ《哀悼行事》の第1曲「ソナティナ」のピアノ編曲でした。
本来は器楽曲と声楽で演奏される曲ですが、ピアノ独奏、連弾でも人気があるようです。


長い閉塞感の中、癒される一曲。
セイモア・バーンスタインの演奏を載せます。


2021年08月10日

舟歌

 

ポーランドで7月12日から12日間にわたってショパンコンクールの予備予選が行われ、その演奏をインターネットで視聴しました。
https://www.youtube.com/channel/UCSTXol20Q01Uj-U5Yp3IqFg

若く、将来をかけたピアニスト達の演奏にこちらの胸も熱くなります。
選抜の結果、日本人ピアニストは31名の出場者のうち13名が本大会に選ばれました。
10月の本大会も楽しみです。

ショパンコンクール課題曲のひとつである「舟歌」は、とても美しい曲で、聴くたびに心が洗われます。
曲は幕を開けるように始まり、たゆたうリズムの中にメロディーが重ねられ、ふと現れる憂いのある和音が聴く人の心をつかみます。
そしてたくさんの音で華やかに彩られたあと、最後に力強い終止形の和音が念を押すように2回響いて、物語の終わりを告げます。

「舟歌」が作曲されたのは、ショパンが36歳の時。
この頃、恋人ジョルジュサンドと心の行き違いがあり、ショパンは彼女と過ごしていた田舎町、ノアンを離れます。
健康状態も思わしくなく、階段を登るのもつらい状態でした。
サンドへの最後となる手紙に「これまでと同じように静かに待ちましょう」と書いていましたが、二人の仲が戻ることはありませんでした。
3年後には肺結核で命を落としたショパン。ままならない人生の想いを美しく描いたこの曲は、晩年の最高傑作といわれています。

たくさんのピアニストがこの曲を演奏していますが、今回はベトナム出身の世界的ピアニスト、ダンタイソンの演奏を紹介します。


2021年07月25日

レッスン動画配信



今月からご希望の生徒さんにはレッスンの様子を動画で撮影し、YouTubeで配信することにしました。
これまではコンクールを受けるような場合だけ、生徒さんが自分のビデオで撮影していましたが、今回は教室から普段のレッスンを配信する形にしています。

録画を見た生徒さんは、「案外、忘れていることがあった・・」とのこと。
改めてレッスンを見返すことでアドバイスを確認でき、練習の質が上がります。
ピアノを弾いたことのない親御さんもアドバイスを参考に親子で取り組めます。
生徒さん自身も録画されているレッスンだと気持ちが引き締まるようです。


フランツ・リストは、芸術家の作品を人々に届けようと馬車にピアノを積んで各地を訪問し演奏した「行動の人」でした。
チャリティーコンサートを始めたのもリストです。
必要と思ったことへの意思と行動力。
そんなフランツ・リストを見習い、「小さなことでも変えていく」気持ちで始めた動画配信です。

生徒さんが上達し、ピアノを楽しく続けられるよう願っています!




2021年07月08日

これから



初めて歌舞伎を見たのは5年前。市川海老蔵さんの舞台でした。
普段クラッシックコンサートへ行く私には、歌舞伎座で休憩中に客席で食べるお弁当にちょっとしたカルチャーショック受け、ワクワクしたことが印象に残っています。
時々聞こえる「大向こう」の掛け声も新鮮に聞こえました。

18世紀の音楽会というのは今のようにシンとして聴くようなものではなく、いわゆる社交場で、「貴族お抱えの音楽家」の演奏を真剣に聴く人は多くありませんでした。
聴衆は皆タバコをふかし、おしゃべりに夢中。
静まって聴くようになったのは19世紀、音楽家がそれぞれ一人の「芸術家」になってからです。作品と向き合ってほしい作曲家の意図的な活動によります。

現代のクラッシック演奏家たちもインターネットで自由に発信できるこの今をチャンスにしているように思います。
これまで注目されて来なかった曲を探して演奏してみたり、日常的に音楽を提供できるような気軽な演奏を配信してみたりと、活動の場を広げています。

先日、若いピアニスト内藤晃さんの編曲した「G線上のアリア」の楽譜を購入しました。
見開きの2ページの、読みやすく美しいハーモニーの編曲です。
内藤さんもご自身で演奏したものをインターネットで発信されていました。
「クラッシック音楽で生きていく」のはなかなか厳しく、努力のいることですが、それでも美学をもった作曲家や演奏家の皆さんの活動を支持し、応援したいと思っています。



2021年06月23日

軽井沢千住博美術館



週末、伴奏で軽井沢へ行きました。
昨年の秋に続き二度目です。
お天気も良く、高原の爽やかな緑の木々に気持ちもリフレッシュ。

今回は寄り道して軽井沢駅から自転車をレンタル、20分ほどサイクリングして中軽井沢に近い「軽井沢千住博美術館」へ行ってみました。
「千住家」といえば長男の博氏は画家、次男の明氏は作曲家、長女の真理子さんはヴァイオリニストとしてそれぞれ活躍し、時々メディアにも出演なさっています。

この美術館は今年で10周年だそうで、今は新旧の作品が揃った「開館10年の軌跡展」を開催しています。

美術館へのアプローチにはきれいに手入れされた様々な木が植えられ、中へ入ると真っ白な壁と大きな窓。窓からも庭の木が見え、庭とつながっているかのよう。

絵は見上げるくらい大きなものが多く、離れてじっくりと見られるように配置されています。
画業の変遷を見ると、技法を研究なさってきたのがよくわかりました。
作画の際に使われた筆やスプレー、岩絵の具なども、展示されています。

「The Fall」(落下)と名のついた、滝のように勢い良く水が落下し水しぶきが上がっている様子を描いた作品は、博氏がヴェネチアで名誉賞をとり、国際的にデビューするきっかけとなったものです。
以前テレビ番組の映像でこの絵を見たことがありましたが、実際に見ると奥行きを感じ、立ちのぼる水しぶきがこちらにまでやって来そうな存在感にしばらく立ち尽くしました。

その他、鹿をモチーフにした16枚の絵は、絵巻物をイメージして描かれ、順に見ていくと物語になっていてお子様でも楽しめそう。
こちらは文字の無い絵本として出版もされたそうです。

久しぶりに感動した、素敵な時間。
よかったら一度、訪れてみませんか?


2021年06月08日

表現



レッスンでは、生徒さんの音楽表現の幅を広げるために、アナリーゼ(楽曲分析)した後、生徒さんと一緒にイメージを色に例え合ったり、身体を動かしてリズムを感じたりしています。

更に進んだ表現力を養うために、佐怒賀悦子先生は著書「ソルフェージュの庭」の中でリトミックの『プラスティーク・アニメ』を薦めています。
これは音楽と心や身体を繋げるような訓練。
音の高さやフレーズ、リズム、呼吸感、緊張感などを手や身体で表現します。

佐怒賀先生は「人に分かりやすく伝えるためには、自分が楽譜から読み取ったものをどう表現したいのか……という意思が、はっきりしていないとなりません」と書いています。
音楽を解釈し身体を動かすことで、音符をなぞるだけではない能動的な演奏へつなげます。

レッスン中にピアノから離れて踊り出すこともしばしば……。
音楽を感じ、理解し、イメージして表現する。これが楽しみになり、上達していけると良いですね。


2021年05月25日

ヨハン・シュトラウス



3拍子は「踊り」の拍子。
強拍から弱拍へと流れる音楽「ワルツ」は19世紀のウィーンの舞踏会で演奏されました。
作曲家ヨハン・シュトラウス2世はウィンナーワルツの音楽で一世を風靡し、ウィーンだけでなくロシア、アメリカにまで名を広げました。
親交のあったブラームスは「美しき青きドナウ」がお気に入り。
シュトラウスの代表作のひとつです。ワーグナーやラヴェル、チャイコフスキーも影響を受けています。

先日、近所の公園でヨハン・シュトラウスの名と思いがけず出会いました。
薔薇の名前です。
幾重にも重なった花びらは淡いサーモンピンク。美しいドレスをまとった貴婦人が優雅にご挨拶をしているようです。
シュトラウスのワルツが聴こえてきそうでした。


「美しく青きドナウ」は、ウィーンで毎年開かれるニューイヤーコンサートで必ず演奏されます。
2004年、リッカルド ムーティ指揮の演奏を紹介します。

BGMにすると、うきうきと身体が軽くなりそう。

2021年05月08日

音楽の時間



4月を迎え、生徒さん達は学年がひとつ上がりました。
小さい時から通っている生徒さんも今年は中学生になり、時の流れを感じます。

中学、高校生になると、弾きたい曲の楽譜を自ら持って来ることもあり、一生懸命、興味深くピアノと向き合う様子を見るのは嬉しいものです。

一方で、勉強や部活で忙しく、ピアノの練習が十分できないこともあります。
そんな時は、基礎トレーニング〈聴音(音を聴いて書き取る)、初見奏、ソルフェージュ〉の後、それぞれのペースに合わせて、一緒に譜読みをしたり、曲の解釈について話したり弾いてみたりする「音楽の時間」を過ごします。


演奏技術を上達させることも大事ですが、生徒さん達が自分なりの「音楽の時間」を持てるように、これからも一人一人にあったお手伝いをしていきたいと思っています。



2021年04月21日

心のために



昨日はお天気が良かったので、心の健康のために海までドライブしました。
広々とした水平線、陽射しでキラキラと光るみなも。
少し大きな波音に、明日は雨になるという天気予報を思い出しました。

途中、海辺のレストラン MARLOWE(マーロウ) に寄って手作り焼プリンをテイクアウト。
どこか懐かしい味で、ふんわりとした優しい甘さが次のひとくちを誘います。
http://www.marlowe1984.com/html/page8.html

千葉真知子さんの「食べるクラッシック」によると、19世紀のウィーンでもやわらかなウィーン風プリンが大流行していたそうです。


コロナ渦による心の影響は、小中学生でも看過できないとのこと。
生徒さんには感染対策以外、コロナ以前と変わらない雰囲気になるよう努めています。

心の元気も大切にしていきましょう。



2021年04月05日

幻想即興曲



「今度の発表会に弾く曲、ショパンの《幻想即興曲》はどう?」
もうじき5年生になる生徒さんに提案してみました。
「え、……無理、無理!」
目を真ん丸にしています。
「この曲あまり好きじゃない?」
「ううん、憧れの曲!!」
「そう、よかった。頑張ってやってみたら?」

そして、彼女は少し高揚した様子で承諾しました。

初めての大きな曲としてチャレンジするのにぴったりな幻想即興曲。
実は、ショパンの死後出版されたこの曲には2つの楽譜があります。
ショパンの親友フォンタナの校訂で、こんにちよく弾かれている「フォンタナ版」と、のちに見つかったショパンの直筆譜による「ルービンシュタイン版」です。

曲の半ばからメロディーのリズムや左手の和音などが少し違い、直筆譜の方は、ドラマティックな和音、ちょっとしたしかけが散りばめられているようにきこえます。

直筆譜を発見したルービンシュタインのピアノで、それぞれの楽譜による演奏を載せます。
違いを感じてみましょう。

「フォンタナ版」14:50より再生


「ルービンシュタイン版」





2021年03月22日

ピアノ奏法



パリのサロンでフレデリック ショパンの演奏を聴いた人々は、その繊細で優美な演奏に心を打たれました。

ショパンはピアニスト・作曲家でしたが、生業はピアノ教師。とても高いレッスン料だったのは有名です。独特と言われたその奏法はショパン自身があみだし、指導も画期的でした。


昭和の時代、日本のピアノ指導は指先を立てるドイツによる奏法が主流でした。
昨今は指をなだらかに伸ばし、打鍵後、手のひらで受け止めるように演奏する「ショパン奏法」の流れを受けた指導法が増えてきています。
突き詰めると奥が深い奏法ですが、まずは「なだらかに伸ばす指」での弾き方ができると響きが美しく、力まず楽に弾くことができます。


ピアノを習いたての時期は音を出すだけで終わってしまいがちです。「演奏」には、やはりフォームが大切。
早い時期から弾き方に根気強く取り組むことが、力まない良い演奏につながります。

基礎力をきちんと身につけて、美しい音で弾けるようにしたいものですね。


2021年03月07日

作曲家を知ろう③



「作曲家を知ろう③」は永遠の青年、シューベルトです。

 歌曲「魔王」「美しき水車小屋の娘」交響曲「未完成」やピアノ曲「さすらい人幻想曲」「楽興の時」など数多くの名曲を残しました。
ピアノ曲は、聴き終わるとひとつの映像作品を観たような気持ちになり、この音楽は彼のどこからやってくるのだろう、と天才の偉業に感動します。

18世紀も終わりに近い1797年、フランツ・シューベルトはウィーンに生まれます。
父親からヴァイオリンを、兄からピアノを習うとみるみる上達し才能を現したフランツは11歳で今のウィーン少年合唱団の前身「コンヴィクト」という宮廷礼拝堂の全寮制少年合唱団へ入ります。そこで基礎教育と本格的な音楽の勉強を受け、優秀な成績を修めました。

父親は教師で、たくさんの子供や親戚を経済的に支えますが、その真面目で保守的な価値観はフランツとは相容れず、彼を苦しめました。18歳の時に、たった4時間ほどで作曲した「魔王」はそんな父親との関係を表したとも言われています。「お父さん、お父さん」という歌詞と切迫感のあるピアノ伴奏が印象的で、学校授業の鑑賞作品にもなっています。

才能にあふれたシューベルトでしたが、ずんぐりとしていて身なりや生活ぶりには無頓着。穏やかで控えめな性格で皆に愛され、多くの友人に恵まれました。
そして実家を出てからはほとんど間借り生活をし、作曲家として生きた31歳までの11年間にウィーン内で16回も引越をしています。


 当時のウィーンは、「ウィーン体制」のため社会は思想抑圧されており、市民は日常をつつがなく過ごすことに努めていました。それでも革命、戦争、死が身近にある時代。
歳を重ねるほど、美しくもはかなさを孕んだシューベルトの音楽が心に迫ります。

「愛を歌うと悲しみになり、悲しみを歌おうとすると、それは愛になった」
(シューベルト散文より)


2021年02月20日

音楽家の食卓



ドイツ料理のシェフ、野田浩資さんの「音楽家の食卓」という本を読みました。
バッハ、ベートーヴェン、ショパンなどの作曲家の生涯やヨーロッパの風景と料理の写真、そのレシピが載っています。
オールカラーなので写真集のようでもあり、見返しても楽しめます。

野田シェフの六本木にあるドイツ料理店「ツム アインホルン」ではイベントとして、3月末までこの本に掲載されたお料理のメニューを注文できます。
ひと月延びた緊急事態宣言後でもまだ間に合いそう。
今から予約が取れるようです。
https://www.zum-einhorn.co.jp/


「月刊ショパン」とYouTubeのコラボにより、ベートーヴェンやドビュッシーの食べたメニューを野田シェフが作っている動画を見られます。
見ると自分にも作れるような気分に……。
https://youtu.be/sqP7mNx6U0w

そこでレシピにあったベートーヴェンの食べていた「赤ワインケーキ」を再現。
ドイツのボンはベートーヴェンの出身地で、その郊外はワインの産地でした。そのため赤ワインケーキがよく作られたそうです。

ベートーヴェンが大好きだったコーヒーも添えて。

2021年02月04日

曲を知る




演奏する楽しみのひとつは、楽譜に書かれた音符を生きた音にしていく事でしょう。
譜読みの時は音型、リズム、調性などから作曲者のメッセージを読み取ります。


最近、子供向けのアナリーゼ(楽曲分析)教材の出版が増えてきています。
教室で用いている岩瀬洋子先生の「わかーるソルフェージュ」も子供用アナリーゼ教材のひとつで、簡単な2曲を比べて同じ音型やリズムの違いを見つけたり、フレーズ(旋律の区切り)の違う同じ曲を歌い分けたりと、構成に注目するよう作られています。

小さな生徒さんでも弾いている曲のしくみが明らかになると、落ち着いた演奏になり、自発的に表現できるようになっていくのでアナリーゼは上達に欠かせません。
曲が作られた背景などもわかると、更に内容のある表現になっていきます。


ピアニストで寄稿文の執筆や翻訳でもご活躍の内藤晃さんは、記事の中で「自分がどう表現したいか、という欲求は、作品を深く知ることによって生まれてきます」と書いています。
レッスンでは、アナリーゼと共に作曲者や当時の社会についてのお話をしたり、YouTubeで関係のある曲を聴いたりしています。

色々な面から曲を知っていき、生き生きと演奏していきましょう。


2021年01月19日

新年



2021年、お正月のお休みが明け、レッスンを始めています。

昨日、生徒さんの出場するコンクールの全国大会が行われました。お母様から結果報告がきて、写真も送られてきました。
写真に写った生徒さんは賞状を持ちピカピカのメダルを着けていました。
嬉しい出来事に、これから1年の原動力をもらいました。
どうもありがとうございます。

日々生活していると「慣れ」が増え、あっという間に時が過ぎます。
心理学「ジャネーの法則」によれば年齢と共に時間感覚そのものが短くなるとか。
人生で時を長く感じられるようにするには「新鮮な気持ち」になることだそうです。

今年もレッスンプログラムの見直しや、「新しいこと」へのチャレンジを1つでも多くしてみたいと思っています。

どうぞ本年もよろしくお願いいたします。


2021年01月06日

お勉強会



ピアノ教室リズムガーデンでは、年に2回発表の機会があります。
先日はそのうちの1回。「お勉強会」でした。
舞台のないフラットな場所での演奏で、少しラフな雰囲気です。
生徒さんの演奏する曲は、基本的に普段レッスンで使っている楽譜を用いるので、生徒さん同志で曲が被ることもあります。
そこで、演奏者によって音や曲の感じ方が様々であることを学んで欲しいと思っています。

今回は教室に入会後、最初の発表になる生徒さんも数名いました。
幼稚園の生徒さんは、大勢の前で1人でお辞儀をするなんて初めて。
恥ずかしがっている様子が微笑ましく、会場も和みました。

保護者の方からは、「生徒さん達の演奏に成長を感じて毎回楽しみに聴いています」とメッセージを頂きました。


2020年もあと半月。
今年のblogはこれで最後になります。様々な困難を乗り越えた年でしたが、来年も希望をもち続けられる年であるよう、願ってやみません。

では皆様、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。


2020年12月16日

癒しの曲



ブラームスのインテルメッツォを聴くと、家にいてゆったりと過ごすのが嬉しくなります。
ピアニストはグレン グールド。何度聴いても感動する名演奏です。

ピアノ作品でのインテルメッツォ(間奏曲)とは性格的小品と言われ、比較的短い曲をさします。
ブラームスのものは数曲セットでひとつの作品になっています。

「作品118」は敬愛するクララ シューマンへ誕生日を祝う手紙と共に献呈されました。
クララ シューマンは、作曲家シューマンの妻で、女性ピアニストです。
ブラームスは未亡人となったクララを生涯支え、作品のアドバイスをもらうなど厚く信頼していました。
お互いの書簡を交換しそれぞれ処分したそうで、秘めた関係であったともいわれています。


まだ若い頃、習っていた先生にこの曲が弾きたいと伝えると、「ちょっと早いんじゃない?」とあっさり却下されたことがあります。

「作品118」が作曲されたのはブラームスが60歳の頃。身近な人々が亡くなったり、自身の健康不安もあり引退を考えていた時期の作品です。
人生を振り返るような懐かしく暖かみのあるメロディーと共にマタイ受難曲の「痛ましいキリスト」の歌の要素も含まれた深い音楽になっています。

2020年12月03日

コンクール



18世紀、パリ音楽院で「最も優れた生徒を表彰する」のを目的にコンクールが始まりました。
今のコンクールとは少し違い、審査は生徒が弾く楽器ではない楽器の専門家による採点です。
楽器の演奏技術よりも生徒の「音楽性」が評価の対象になりました。
コンクールで生徒の演奏技術が評価されだすのは19世紀半ばになります。

昨今の日本では全国で幼稚園児も参加できるような子供向けのピアノコンクールがたくさん催されています。
演奏に点数や順位がつくとなると、練習する気持ちが引き締まるものです。
「どう弾くのか」
生徒さん達は音楽や技術と真剣に向き合うのでぐっと上手になります。


「先生、私ピアノコンクールに出たいです」
今年の夏、6年生の生徒さんからのお申し出がありました。
初めての挑戦です。
練習を前向きに取組み、無観客で秋に開催されるコンクールにチャレンジしました。

生徒さんは地区予選を通過、本選で最優秀賞をいただき、来年はじめに全国大会へ出場することになりました。

小学校最後に、素晴らしい思い出を作った生徒さん。大会も全力で乗りきって欲しいです!


2020年11月22日

ホームコンサート



今年はベートーヴェン生誕250年。

そのベートーヴェンをこよなく愛する坂田さんは、大手旅行会社にお勤めのエリートサラリーマンで、ピアニストでもあります。
以前、私がオランダ人の先生に習っていた時の先輩です。

先日、坂田さんのホームコンサートへお招きいただきました。
坂田さんは、5年前からベートーヴェンピアノソナタの全曲披露を始め、毎回3曲ほどのソナタを演奏なさいます。演奏前に解説があるので、理解が深まります。

今回の曲目は、4、10、31番でしたが、31番は「後期三大ソナタ」と言われるうちの1曲で、ベートーヴェンの円熟した晩年の作品。1楽章は天国的で穏やかな響きで始まり、フーガが用いられた3楽章まで聞き応えのある、技術的にも難しいソナタです。

コロナ対策もしっかりなさり、演奏後には奥様手作りのオーガニックお菓子が1つずつ丁寧に包まれて出され、他のお客様とも距離をおいて少しお話を楽しみました。

お仕事の他に、音楽と共に豊かに過ごす……ピアノ教室の生徒さん達にもそんな日々が過ごせるようなレッスンにしていきたい、と心を新たにしました。




2020年11月05日

イアン ボストリッジ



普段は器楽の曲を聴くことが多いのですが、YouTubeで色々と曲を探しているうちに、シューベルトのドイツリート(ドイツ歌曲)で素晴らしい声楽家に出会いました。
その方はイギリス人の「イアン・ボストリッジ」というテノール歌手。
ドイツリートといえばドイツ人バリトン「フィッシャー=ディスカウ」が有名で、それは本当に美しく、正確で繊細な歌声です。
ボストリッジはその歌を思い起こさせました。

調べてみるとそれもそのはず、彼はケンブリッジとオックスフォードで勉強した学者で、10代の頃ディスカウの歌に衝撃を受け、ひたすら聴くことで丸暗記、歌い方も誰に習うでもなく真似することで上手くなっていき、とうとう本当にオペラまで歌う歌手になってしまったという人物なのです。

ボストリッジは音楽を専門的に学んでいない事について、こう述べていました。
『本質的に私は音楽にはアマチュアで、たぶん多くの面でそれはこれからも変わらないのではないかと思います。音楽が好きになったから、勉強しているだけです。』
(イアンボストリッジ ~シューベルト冬の旅を語る~
https://artespublishing.com/news/bostridge_interview/より)
このような謙虚な姿勢に習って、ずっと好奇心を失わないでいたいと思います。

ボストリッジのCDにはイギリスの歌曲集もあり、レイフ・ボーン・ウィリアムズ作曲の6曲からなる「命の家」第2曲「サイレントヌーン」は、特に評価された作品なのでこちらを紹介します。




2020年10月23日

大賀ホール



軽井沢駅から10分程歩くと美しい池の向こうに大賀ホールが見えてきます。
大賀ホールはSONYの名誉会長であった大賀典雄氏が退職金で建てた音楽ホールです。
東京芸大を卒業された大賀氏は軽井沢を音楽の街にしたいという思いで設立したそうです。

先日、ピアノ伴奏でその舞台に上がる機会がありました。

ホールは五角形の建物で、舞台も五角形。なだらかなすり鉢状にせりあがる観客席は舞台を囲うようにおかれています。
音も拍手も演奏者を包むようによく響く素敵なホールです。

軽井沢は朝晩は冷え込み、昼間も曇っていると肌寒い気候。
店頭にはダウンジャケットが売られています。
紅葉が始まり、落ち葉の道を歩くと秋が深まっているのを感じました。
もう少しコロナが落ち着けば、音楽会に足を運んでみるのもお薦めです。

「ピティナ」という音楽指導者協会の催す「ステップ」は、誰でも素晴らしいホールで演奏できる音楽会です。先生からの講評もいただけ、生徒さんにとっては大変良い経験になります。お教室以外の生徒さんの演奏を聴くのも勉強になります。
最近は取りやめになっていましたが少しずつ開催が増えています。ご希望の方はお申し込みください。



2020年10月06日

チェロコンサート




昨夜はチェリストの長谷川陽子さんのコンサートへ行きました。
伴奏はピアニストの青柳晋さんです。
受付で検温と消毒をし、もちろんマスクは着用。観客はほぼ満員でしたが、座席はソーシャルディスタンスをとるよう配置されていました。

チェロの演奏はベートーヴェン、ブラームスのソナタで始まり、よく知られたサン・サーンスの「白鳥」もありました。
深く響く低音、まろやかに伸びる旋律が会場に響き渡り、ピアノと相まった美しい音楽に癒されました。
この響きを感じることは、ライブならではのものです。

ピアノも1曲披露され、青柳晋さんによるリスト作曲「ハンガリー狂詩曲2番」はダイナミックで素晴らしいテクニック。まさにピアノの魔術師、フランツ・リストの曲、といった演奏でした。
終演し、座席一列毎に退出するよう促され、観客はすみやかに会場を後にしました。

表現して生きる人々にとってそれが出来ないことは、とても辛いことでしょう。
せっかくの素晴らしい時間を共有させて頂けないのも残念なものです。
このような演奏の場を大切に、丁寧に継続しようとなさっている演奏者、主催者の方々。
それを応援する気持ちになり、のびのびと表現できる日が戻ってくることを、心から願っています。

2020年09月24日

マヨルカ島



日曜日、田園都市線二子玉川駅近くの「マヨルカ」というカフェテラスへ行きました。
そこはスペイン、マヨルカ島の「エンサイマーダ」という焼きたてパンが評判のお店です。

マヨルカ島は石灰岩からなる岩山で、いくつもの入江は美しい地中海に囲まれています。
1838年に、肺を病んでいたショパンが療養のために恋人のジョルジュ・サンドとその子供達を伴って訪れた場所でもあります。
ショパンは島にあるヴァルデモッサという村の修道院で数ヶ月暮らしました。
ところが記録的な大雨が続き、肺の病だったショパンにとっては辛い日々でした。しかしそういった中でも作曲し、24曲からなる前奏曲集を仕上げます。
前奏曲15番「雨だれ」は特に有名です。
現在、修道院には当時のピアノがそのまま置いてあり、一部がショパンミュージアムになっているそうです。


さて、伝統菓子「エンサイマーダ」の味はというと、ほんのり甘く表面はパリっとして中はしっとり。クロワッサンと揚げパンを合わせたようでした。
お店には他に、チョコレートでコーティングされているものや、オレンジピールが入っているものなどもあります。

帰りに、食べると口の中でホロホロと崩れる優しい食感の、アンダルシアのクッキー「ポルボロン」を購入。
こちらは、食べている間に3回「ポルボロン」と唱えると幸せになれるのだとか……。

年末の生徒さんへのプレゼントは「ポルボロン」に決まりです。

2020年09月14日

発表会



8月29日(土)はピアノ教室の発表会でした。
保護者の方々のご協力により無事に開催でき、心から感謝しております。
今回はYouTubeで発表会の様子を限定公開しています。
コロナ渦中で発表会にいらっしゃれなかったご親戚の方やお友達も見ることができます。

1部は独奏の部。
舞台の端で「あー、ドキドキする~」「どうしよう……」と緊張でいっぱいの生徒さん。
たった1人で立ち向かい舞台へあがって行く勇姿は、感動的です。

2部は連弾。
連弾には、パートの役割を知ること、相手の音楽を聴くこと、息を合わせる呼吸など、大切なことがたくさんあります。
そして自分が間違えると責任が伴うので子供さんにとってはよい学びの機会です。
親子での連弾は、忘れられない思い出に……。

発表会は生徒さんの日頃の成果を聴いて頂く機会ではありますが、皆様の人生のよい思い出の一部になれればと願いつつ、開催しています。

そして今からまた、来年に向けて1から計画を立てています。
生徒さんからの弾きたい曲のお申し出も待っています!


2020年08月31日

作曲家を知ろう➁



和音に命を吹込み、イメージを喚起させる作曲家。
「作曲家を知ろう②」は、前回blogに載せたドビュッシーです。
彼はロマン派から前衛芸術への過渡期を担う、スキャンダルだらけの不器用な天才でした。

クロード・アシル・ドビュッシーは1862年、フランスはパリから20キロ程離れたサンジェルマン=ア=レという場所で陶器店の息子として生まれます。
しかし暮らしは貧しく住まいを転々とし、十分な教育を受けられませんでした。小学校にも通っていません。
とはいえ、10歳で入学したパリ音楽院では次第に成績を上げていきます。

音楽を通して裕福な人々との交流が始まります。文学のサロンにも通い、仲間が増えました。その中で「貴族趣味」といわれる程、美しいもの、価値のあるものに執着するようになります。コレクションは仏像、エジプトの壺、浮世絵など数多くあり、葛飾北斎の「神奈川沖波裏」は書斎に飾るだけでなくオーケストラスコアの表紙にしました。
しかしその浪費癖で生活はしばしばひっぱくしてしまいます。

ドビュッシーは、心を開く友人はいたものの、頑なでこだわりが強く、結局は仲違いすることの多い人柄。女性問題もドビュッシーを語るときには外せない程です。
そしてトラブルのせいで、せっかく築いた音楽界での立場を追われることになり、時代の第一線から少しずつ退くことになっていきます。

芸術は抽象的前衛へと進みますが、ドビュッシーは抽象化を試みながらも聴衆の理解し得ない音楽について危惧していました。
「音楽の本質は形式にあるのではなく色とリズムを持った時間である」という価値観を打ち出した彼の音楽は、どこか心地よく魅力的。聴く者をその音楽に参加させます。
練習中も作品と向き合う時は興味深く、豊かな時間です。

晩年は腸の病気で闘病し経済的にも苦しい中、作曲を続けます。
そして自分を信じ、音楽の常識を変えた特別な人物は、少し早い55歳で人生の幕を閉じました。



2020年08月21日

ドビュッシー「沈める寺」

 

 

以前、日本在住のオランダ人ピアニストの方に演奏を習っていた時期があります。テクニックや楽譜の読み方など、今の自分に欠かせないものを教えていただきました。
発表会もあり、社会人のピアノ愛好家やピアノ教師など大人の生徒さんと、演奏後ワインとともに談笑したことは良い思い出になっています。

その発表会で私が演奏したドビュッシー(1862~1918)の作品集「前奏曲」の第10曲「沈める寺」を掲載します。

ドビュッシーは、全音音階というそれまでの長音階や短音階と違う音階や、民族音楽にみられらる五音音階を使い、情緒や印象を描写しました。
この「沈める寺」は、ケルト伝説からインスピレーションを受け、「不信心により海底に沈められた巨大な聖堂が、少しずつ霧の中から鐘の音や聖歌とともに出現し、やがてまたゆっくりと沈んでいく」という、壮大で幻想的な曲になっています。

また、ドビュッシーの好んだ東洋的な和音や中世の聖歌のような重なった旋律(平行オルガヌム)、様々な教会旋法が用いられ作曲されています。

そして、ドビュッシーはこの曲集「前奏曲」で、演奏者が題名にとらわれすぎないよう、曲の冒頭ではなく、最後に「沈める寺……のようなもの」という形で示しましたが、この曲は鐘の音、光、海へ沈むさまなど題名の印象が目に浮かんでくるような作品になっています。

 

 


2020年08月09日

リトミック



昨年からリトミック指導者、大城依子先生のピアノ講師向け講座を受けています。
そこでは、ダルクローズメソッドである《リトミック、ソルフェージュ、即興》の分野を学んでいます。

リトミックというと、日本では幼児期に多く行われていますが、大人でも表現力や感性を養える大変奥が深いものです。
創案したのはスイス生まれのエミール・ジャック=ダルクローズ。
ダルクローズは「人が歩く時の身体の左右規則正しい動き」を基礎に、体重と空間を使ってリズムや音楽を感じる様々な方法を考案しました。

例えば、大城依子先生の授業では、次のような実践を行いました。まず、フラフープを「ケンケンパ」のように一直線に置きます。そしてそのフラフープのひとつひとつを、だんだんと距離を離して並べます。
フラフープの輪を一歩ずつ歩きますが、その距離が増すことで勢いが出ます。徐々に上がるピアノ伴奏の音量と体の動きをシンクロさせることで、音楽における「クレッシェンド」(だんだん音を大きく)を体感します。

これはほんの一例で、音楽が目に見える形になり体感できるたくさんの実践や、これまで知らなかった視点の音楽理論もあり、興味深く学んでいます。
リトミックは、たいてい複数で行うので、一対一のピアノ教室でできることは限られていますが、応用して「楽しく身に付くレッスン」に結びつけたいと思っています。

2020年07月24日

作曲家を知ろう①



「愛の夢」「ラ・カンパネラ」などを作曲したフランツ・リストは超絶技巧のピアニスト、ハンサムで社交界のアイドルだったことで知られています。
しかし、リストの内面は劣等感や憧れ、葛藤などが強く、悩んだ時期もありました。

今回は「作曲家について知ろう①」と題してフランツ・リストを挙げてみました。
作曲家や時代背景等を知ることで演奏への理解が深まります。
私にとっては、リストには生きる姿勢も教えられています。

リストは1811年、オーストリア領ライディングという小さな村で生まれました。
ハンガリーを祖国としていますが、ハンガリー語が話せなかったのは有名です。
幼いころから貴族の前で演奏するなど、音楽の才能を発揮しましたが、17歳の時に挫折を経験します。
父親が亡くなり、フランスでピアノ教師となったリストは、生徒であるカロリーヌ・ドゥ・サン・クリック伯爵令嬢と恋人同士になりました。ところが彼女の父親は、田舎出身の音楽家との交際を許さず、リストとの間を引き離しました。
多感な時期でもあり、リストは深く傷つき、2年程引きこもってしまいます。
キリスト教の教えに傾倒し、音楽には天賦の才がありましたが、高等教育を受けていなかったので、文学、哲学、宗教を熱心に勉強します。後の手紙に「カトリックの厳格な信仰行為に没頭する他ありませんでした。」と書いています。
そして1830年のパリでの7月革命も後押ししてか、次第に自信を取り戻していきました。

こういった謙虚に学ぶ姿勢は生涯変わらず、音楽界のためにも様々な貢献をしました。
ほかの作曲家の作品を親しみやすく編曲し人々に広めたり、音楽院を作って教育したり。
また当時、音楽会の多くは何時間もかけて交響曲や協奏曲、オペラ、即興演奏など、一度にたくさんの曲目が演奏されていましたが、リストは「リサイタル」形式の1人演奏会を広め、現在の演奏会形式につながっています。
さらに、晩年まで作曲技法も研究し、無調音楽にも発展させています。
亡くなる6日前、弱った体を推してでも必要とされた音楽会に行くようなリスト。

今ではバイロイト音楽祭で有名なドイツのバイロイトに眠っています。

2020年07月12日

子供の情景



シューマンの「子供の情景」を ウラディミール ホロヴィッツが弾いたCDがあります。
これは、我が家にあるCDの中のお気に入りの一枚です。

作曲者シューマンがこの曲を作曲したのは1838年、妻となるクララに「あなたは子供みたいね」といわれたのをきっかけに作られました。
「子供の~」という表題ですが〈子供心を描いた大人のためのピアノ曲〉になっています。

そして、ホロヴィッツは20世紀を代表するピアニスト。彼の演奏は「独特」とも言われますが、多くの人を魅了しています。
1982年のインタビューで、これからピアノを習おうとしている子供たちに向けてのメッセージがありました。心に留めておきたい言葉です。
(以下引用 [私のお宝映像]http://blog.livedoor.jp/door310/archives/50252949.html)

「音楽というのは黒い点と白い点で書かれていて、演奏する者はその点を一つ一つ弾いていくわけです。しかし本当の音楽というのはそれぞれの点の裏に隠れているんです。一枚の紙ではなく、箱のようなものである事を知るのが大切なのです。表面に表れているものだけでなく、その奥にひそむ音楽までを演奏できるようになってほしいということです。」

「子供の情景」の中から、[トロイメライ] のライブ音源の映像を紹介します。

2020年06月28日

ピアノ


今回はピアノについてのお話を少し。
現在のピアノは、19世紀後半に完成しました。それ以前には、打弦の構造が違う2種類の「ピアノフォルテ」という楽器がありました。鍵盤を押し、梃子の原理でハンマーを跳ね上げて弦を鳴らす「ウィーン式アクション」、複雑な構造をもち、ハンマーを突き上げて弦を鳴らす「イギリス式アクション」です。

改良が盛んに行われたその頃は、ベートーヴェンの時代。
彼のところには楽器制作者が持ち込んだ新作のピアノがいつも置いてありました。
「ウィーン式アクション」はタッチは浅く俊敏で、華やかな音。
「イギリス式アクション」の鍵盤は深く沈み、音は大きく、和音を響かせました。
「イギリス式アクション」について、ベートーヴェン曰く「タッチが重すぎて作曲したくない程だ。」
なんと、指にかかる重さはウィーン式の2.5倍ほどでした。

それでも、改良によって音域が拡がり、音のよく鳴る「イギリス式アクション」はベートーヴェンにインスピレーションを与え「ワルトシュタイン」、「熱情」といったピアノソナタを誕生させました。
更に、ベートーヴェンは音域がもっと拡がることを見越して、まだ出来上がっていない音域のピアノ曲まで書いてしまいました。「ハンマークラヴィーア」というソナタです。

こういった改良の経緯を知っていくと、楽器製作者の熱意を感じずにいられません。
その後、アクションは「イギリス式」となり、今や音は電子音にもなっています。
浜松市や武蔵野音楽大学(リニューアルオープンのため現在は閉館中)にある「楽器博物館」へ行くと、当時の様々なピアノを見ることができます。
時折古楽器による催しもあるようですので、訪ねてみるのもお勧めです。楽器の特性を知り、楽しんで演奏していきたいものですね。

2020年06月17日

Web



生徒さんとの動画レッスン、ピアノ教師のZoomによる勉強会や講習会など、最近はWebでのやりとりが多くなり、以前より身近なツールになってきました。

昨日、アコースティックギターの鬼怒無月(きどなつき)さん、クラシックギターの鈴木大介さんの2人が、それぞれ作曲した曲を一緒に奏でる「The DUO」のライブを聴きました。ライブといっても今回は無観客での、投げ銭ネットライブです。
「投げ銭」とは基本無料視聴だけれども、観客の厚意による支払いを受け付ける、というものです。
小さめの空間に、ギター演奏、私は自宅でリラックスしつつライブ音楽を味わうという、これまでにはない不思議な、居心地の良い時間でした。音質も大変良く、すっかり聴きいっていました。
「今」を共有し、提供する方とコメントでやりとりできたりと、ネットによってコミュニケーションが拡がっているのを実感します。

あるピアノ教室ではコロナの影響で発表会ができないので、自宅録画した演奏をYouTubeの限定公開で行うとか。これは生徒さん同志のコミュニケーションに役立ちますし、楽しみも拡がりそうですね。このお教室でも、何かチャレンジ出来そうな予感……。

2020年06月07日

響き


アメリカの作曲家ギロックは、子供のための作品を数多く残しています。
今、生徒さんがギロックの「まぼろしの騎士」という曲を練習中です。その曲の最後の小節に書かれているのは、音ではなく休符のみ。音は最後から二番目の小節までです。音がないのにわざわざ休符を書いているのです。作曲者の意図は、休符の時間は最後の音の響きを感じているように、ということなのでしょう。

アコースティックピアノは、弾いた後、音は少しずつ減衰し、やがて聴こえなくなります。
演奏者は聴こえなくなるまでの音を次々とつなぐのです。
ピアノ演奏では、そのつながりの時間が大切。そして、響きと自分が共鳴する感覚が必要です。

響きの美しい曲として、スペインの作曲家モンポウ(1893~1987)の「内なる印象」を紹介します。
この第1曲目には拍子がありません。音の余韻を味わってみましょう。

2020年05月25日

演奏を聴く



18世紀、モーツァルトの時代も、コンサートを開くには、たくさんの経費がかかりました。モーツァルトは手紙の中でこう言っています。
「ぼくの収入はもちろんもう少し多かったのですが、楽団、照明、見張り、印刷、いくつもの入口にいる大勢の人達のための雑費が大きな額になります」
なるほど、と思ったのは、当時チケット代の40倍程かかったという「照明」の代金。
その頃は電気が無いのでろうそくで明るくしており、決して安くはないろうそくを大量に使ったそうです。

今、コロナ渦に於いて多くのアーティストがInstagramやTwitter、YouTubeなどで演奏を提供していらっしゃいます。
経費はそんなにかからないものの、勉強と訓練の賜物を私達は無償で聴くことができます。

ギタリストの鈴木大介さんは毎晩2分程度の曲を2曲、Twitterに載せていて、私を含めたくさんの方がそれに癒されています。(作家の平野啓一郎さんも聴いているようです)
彼のblogによると、今後のアーティスト活動を色々と模索中とのこと。
確かに手軽に聴けるコンテンツがある中で、これまでのコンサートだけでなく、媒体を通しての演奏にはまだまだ可能性がありそうです。聴く側も聴かせていただく感謝の思いは形にしたいものです。

とはいえ、ライブのコンサートというのは、やはり感動します。
鈴木大介さんのコンサートが催されれば、ぜひ足を運びたいと思っています。

2020年05月14日

3人のSi



アメリカにずっと住んでいる従姉妹がいます。彼女は細胞の研究をしているのですが、ピアノの腕前も素晴らしく、以前帰国した折にショパンのコンチェルトのピアノパートを弾いてくれました。
「私、ショパン、シューマン、シューベルトが好きなんだよね、siのつく作曲家。」
私も同感で、何か弾こうと思うといつも彼らの作品です。

ショパンは皆さんのよく知るワルツ、ノクターン、バラードなどとても素敵な曲ばかり。
その中でも、ショパンが本当に大切にしていたのは、二度と帰ることのできない祖国の踊曲『マズルカ』でした。彼は生涯に渡ってそれを作り続けていたのです。

シューマンは「溢れるあたたかな父性」があり、子供に向けた小品は特に、子だくさんだったシューマンの優しい眼差しが見えるようです。ぜひ生徒さんにシューマンからのメッセージを受け取って欲しいです。

シューベルトは音読みは難解ではないものの、センスと奥深さは演奏者の技術と理解を試されます。生徒さんにシューベルトを弾いて貰えるのは、私にとっても大変嬉しいものです。

3人のSi、どんな作品があるのか、ぜひ調べて聴いてみてはいかがでしょうか。

2020年05月05日

バッハのプレリュード 1番

緊急事態宣言により動画レッスンに切り替え、3週間経ちました。思った以上に良い気づきもあり、宣言が延長されたらこのまま継続しようと思っています。

先日、生徒さんからバッハのプレリュード1番を弾きたい、とお申し出があったのでYouTubeでその曲を検索し、いろんな方の演奏を聴いてみました。その中でリヒテルというソ連の有名なピアニストのライブ演奏がありました。リヒテルといえば大柄な体で力強い演奏のイメージなのですが、このプレリュードは本当にピュアで繊細な音作りがされていて、驚き、感動しました。紹介しますのでよかったら聴いてみてください。最初に出てくる曲です。

時間のあるこの時期、あれこれと音楽を聴くのも豊かなひと時になりますね

2020年04月29日

動画レッスン

動画によるレッスンが始まりました。
皆さんのピアノ演奏の様子を見て、その取り組む姿に感動しています。
そして皆さんがどんなピアノで、どんな姿勢で練習しているのかということがわかり、大変参考になりました。
ピアノの響き方、普段の椅子の高さや座った姿勢を知ることでアドバイスが変わってきます。私もできるだけコンパクトで分かりやすい内容を目指します。これからも皆さんの動画を楽しみにお待ちしていますね。

2020年04月06日

発表会の曲目を考えています

今日は3月末で桜も咲き始めているのに、外は一面の雪。今年の発表会の日程も決まったので、それに向けて生徒さん一人ひとりを思い浮かべながら、皆さんの発表する曲目を少しずつ考えています。

2020年03月29日